"かたじけない"の意味/使い方とは?類語&例文付き|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2018.11.01
もったいない、ありがとうなどの意味を持つ敬語、かたじけない。よく聞く言葉ですが、使い方が分からない人もいますよね。そこで今回は、かたじけないの意味や由来から正しい使い方、丁寧な例文、返事の例など詳しく解説。言い換えできる類語まで確認していきましょう!

「かたじけない」の意味とは?

「かたじけない」とは、「ありがたい」・「ありがとう」・「感謝する」・「おそれおおい」・「もったいない」・「もうしわけない」・「面目ない」などを意味する敬語表現です。

よく知られている敬語表現ではあるものの、古い時代に使われていた敬語表現であり、現在の日常生活やビジネスシーンで使用されることはあまりありません。

平安時代から使われていた表現であり、現代においては時代劇でのドラマや舞台などで使われることが多いでしょう。ただし、言葉の成り立ちやシチュエーションを覚えておけば、その他の敬語を含めて適切に使うために役立つので覚えておきましょう。


「かたじけない」の由来や語源とは?

「かたじけない」の語源は、平安時代にはすでに使われていたとされています。

「かたじけない」の由来や語源としては、諸説あるものの、「かたし」や「かたしけ」等の言葉が語源になっているとされています。漢字で書くと「難し」や「難し気」と表現します。これらの語源の意味は、「おそれおおい」という意味であり、ここから派生して「もうしわけない」や「ありがたい」などの意味に発展したとされています。

なお、漢字で書くと「忝い・辱い」と書きますが、基本的には漢字ではなく、ひらがなで使われることが多いです。現代でも漢字で読むことができない人の方が多いかもしれません。そのため、文書で書く機会がある場合は、漢字ではなくひらがなで書くようにしましょう。


「かたじけない」の正しい使い方

「かたじけない」という言葉の使い方としては、相手から受けた親切などに対する返しとして感謝の意味を表現する際に使われる言葉です。

誰かから何かをしてもらい「ありがたい」という気持ちで使われるものですので、現代のシンプルな言葉に直すと「ありがとう」になるでしょう

「かたじけない」は敬語表現ではあるものの、目上の人に対しての使い方としては、このままではなく「かたじけなく存じます」などと表現することが多いです。

基本的に昔の言葉ではあるものの、特に自分の身に余る親切に対して使う場合は、文書などで現代でも使う場面があるでしょう。


「かたじけない」を使った丁寧な例文

ありがたいの意味を持った「かたじけない」の例文

取り急ぎご連絡までの注意点
  • 道を教えてくれるだけではなく、わざわざ案内していただきかたじけないです。
  • おみやげをこんなにたくさんいただけるとは本当にかたじけないです。
  • 「お茶をお持ちしました」「かたじけない」
  • 先日はたいそうな贈り物いただきまして、まことにかたじけないです。
  • ありがとうございます。かたじけないですが、よろしくお願いします。

「ありがたい」、「ありがとう」という意味でかたじけないが使われるタイミングとしては、例文から読み取れるように、通常の「ありがとう」では、言い表せられないような施しを受けた時などに、ビジネス文書で使われることがあります。

現代において、日常生活であまり使われない言葉だからこそ、文章においてあえて使うことで、ありがたいと感じている気持を強調することができるでしょう。ビジネスの場で本当にありがたいと感謝の意を表現する場合におすすめです。


恐縮の意味を持った「かたじけない」の例文

取り急ぎご連絡までの時間
  • 先日は私が説明を聞いておらずトラブルを起こしてしまい、誠にかたじけないです。
  • 成果に対してあまりに大きなお褒めの御言葉。私にはかたじけない言葉です。
  • せっかく長時間ご協力いただいたのに、採用とならずにかたじけない気持ちでいっぱいです。
  • かたじけない。先日のメールは私の間違いによるものでした。
  • 本日は遅れてしまいまして、大変かたじけない。

「かたじけない」という表現は、恐縮の意味にも使われます。

どちらかというと、こちらの表現のほうが語源に近い使い方とも言えるでしょう。ビジネスの場で使うとすれば、ありがとうという意味と同じように、文書において特に恐縮した気持ちを伝えたい場合に使うといったような使い方がされることが多いです

「すみません」や「申し訳ない」、「恐縮です」といった表現では、十分に自分の気持ちを伝えられないと感じる場合には、現代文書で使うこともあるでしょう。


「かたじけない」への返事の例

ご指導ご鞭撻の使い方・例文
  • お気になさらず
  • どういたしました
  • 滅相もないです
  • とんでもございません
  • 気にしないでください
  • 喜んでいただけて幸いです

「かたじけない」に対する返しの返事表現としては、例文のような言葉が多いです。

いわれた方としては、善意に対しての返しの言葉、相手が申し訳ないと思った場合の返しの言葉として使います。基本的には、「ありがとう」や「恐縮」といわれた際の返し言葉と同じように考えて構わないでしょう。

ただし、相手が目上の人である場合やビジネスの場である場合もあります。そのような場合は、「お気になさらないでください」などのより丁寧な敬語表現が好ましいです。


「かたじけない」と言い換えできる類語一覧

かたじけないの類語① 感謝

「かたじけない」の言い換えの類語表現として、よくビジネスシーンで使われるのは、「感謝」という言葉です

「かたじけない」の中でも「ありがとう」を意味する言葉の類語であり、相手から親切や施しを受けた場合に、その気持ちを表現する場合に使われます。

「感謝」自体は名詞となりますので、普段の言葉遣いで使用すれば対等の立場の相手に、敬語と組み合わせれば目上の人に対しても使用することができるでしょう。適切に使い分けましょう。

「感謝」の使い方

  • 先日は当社社員の忘れ物を届けていただき、誠に感謝いたします。
  • コンプロジェクトにおいては、度重なるご厚意を賜り、至極感謝いたします。
  • 質問に対するお返事をしていただき感謝します。ありがとうございます。

かたじけないの類語② ごめんなさい

「かたじけない」の類語表現として、「ごめんなさい」という表現も多いです。

相手に対して、申し訳ない気持ちでいっぱいの時に使う言葉であり、さまざまなシーンで活用することができるでしょう。しかし、ごめんなさいという表現は、ビジネスにおいては適切な表現とは言えません。

そのため、ビジネスで使用するのであれば敬語表現である「申し訳ございません」などと適切に言い換える必要があるでしょう。相手が対等の場であるのか、ビジネスの場であるのかを注意しなければなりません。

「ごめんなさい」の使い方

  • 私の不注意で大事な花瓶を割ってしまい、ごめんなさい。
  • ごめんなさい。イベントに参加予定でしたが、先日は体調不良ですぐに返事ができずできませんでした。
  • この度は、せっかくご協力いただいたのに、満足できる結果にならなくてごめんなさい。

かたじけないの類語③ 恐れ多い

「恐れ多い」は、「かたじけない」の本来の語源でもあるので、言い換え表現として使われることも多いです

「かたじけない」と同様に、恐縮するという意味であり、相手に対して申し訳ない気持ちでいっぱいの時に使うことが多いです。ただし、日常生活において対等な立場で使うことは少なく、目上の人やビジネスシーンにおける敬語表現として使われることが多いでしょう。

そういった使い方としては、「かたじけない」とは多少異なります。

「恐れ多い」の使い方

  • 来月開催のパーティーのインビテーションを、私が直接御社社長から返事をいただくのは恐れ多いです。
  • そのような評価をいただけるのは、恐れ多いと感じます。
  • せっかくのお誘いではございますが、恐れ多いため遠慮させていただきます。

かたじけないの類語④ 恐縮ですが

「かたじけない」の言い換え表現である、「恐縮ですが」は意味合いとしては「恐れ多い」と同じような敬語での使い方で使用されることが多いです

適切な使い方としては、相手からの評価や提案などに対して、文頭で謝る際に使用される言葉です。

断りなどを入れる際に、ワンクッション入れることで、相手に対して「申し訳ない」、「恐れ多い」という気持ちを伝えることができます。また、文頭で相手に対して断りを入れる際にも使われることが多いでしょう。

「恐縮ですが」の使い方

  • 恐縮ですが、本日は私用がございますので、このまま失礼させていただきます。
  • 年度末でたてこんでいるところ非常に恐縮ですが、先日のお返事をいただけませんでしょうか?
  • 身に余るお言葉恐縮ですが、この度は辞退させていただきます。

かたじけないの類語⑤ とんでもない

「とんでもない」という表現は、どちらかというと「恐縮」の言い換え表現となります。そのため、「かたじけない」と似ているようですが、微妙に使い方やシチュエーションが異なるので注意が必要です。

どちらかというと、「かたじけない」の言い換えとして使われるよりも、「かたじけない」といわれた際の返事として使われることが多いです。「とんでもない。当然のことです。」といったように、お礼に対しての返事で使われやすいでしょう。

「とんでもない」の使い方

  • 私としては当然のことをしたまでですので、お礼なんてとんでもないです。
  • とんでもないです!お返事いただけただけでもありがたいです。
  • 私が賞を受賞するなんてとんでもないです!プロジェクトチーム全体で受け取るべきものです。

かたじけないの類語⑥ 恩に着る

「恩に着る」という表現は、「ありがたい」、「感謝する」という類語表現であります。そのため、「かたじけない」を言い換える表現として使うことができるでしょう。

ビジネスなどのかしこまったシーンでの利用が多く、「かたじけない」という表現では、少し古すぎると感じる場面で使われやすいでしょう

また、事後ではなくこれから何かをやってもらう際に使われることも少なくありません。ただし、どちらかというと目上の人に使うと失礼になる言葉ですので気をつけるようにしましょう。

「恩に着る」の使い方

  • 客先からの問い合わせに代わりに返事をしてくれてありがとう!恩に着ます。
  • 「仕事の手が空いたから手伝おうか?」「本当ですか?恩に着ます!」
  • たくさんの支援物資をいただき、助かりました。恩に着ます。

かたじけないの類語⑦ ありがたい

「ありがたい」は、感謝の意味で使われる「かたじけない」と同じように使うことができる言い換え表現です

相手から何かやってもらった場合に使われるものであり、現代でもよくつかわれる表現です。かたじけないと同様に、この単語単体には、敬語的な意味を有していないため、敬語の表現をする場合には「ありがたく存じます。」というような表現にするのが好ましいでしょう。

相手やシーンに応じて、使い分けるように注意しましょう。

「ありがたい」の使い方

  • 質問に対して親切丁寧にお答えいただきありがたく存じます。
  • 先日は、たくさんのお土産をいただきありがたく感じております。
  • いつも、何かと眼をかけていただきありがたく存じ上げます。今後ともよろしくお願いいたします。

「かたじけない」の英語表現

お知らせくださいの英語表現
  • Thank you.(かたじけないです。)
  • I appreciate it.(ありがたく存じます。かたじけないです。)
  • I'm embarrassed.(恐縮です。)
  • How embarrassing!(とても申し訳ないです。)
  • It is very kind [good] of you.(大変ありがたいです。)
  • I'm afraid that ~(~で恐縮です)

日本語においても、「かたじけない」は古い言葉となるため、全く同じ意味の英語表現はありません。

ただ、現代において適切な言い回しとしては、感謝の場合は「Thank you.(かたじけないです。)」、「I'm afraid that ~(~で恐縮です)」といった表現がよくつかわれるでしょう。前後の会話に合わせて使い分けるようにしましょう。


「かたじけない」の正しい使い方をマスターしよう!

「かたじけない」という表現は、「ありがたい」や「恐れ多い」などの意味合いで使われることが多いです。ただし、古い言い回しであることから、ビジネスシーンで使われることも少なく、どちらかというとご紹介したような類語で言い換えることが多いでしょう。今回ご紹介した表現を参考にして、適切な敬語を身につけましょう。

【参考記事】「真摯」の正しい使い方を例文付きで解説

【参考記事】「伺う」の使い方から類語まで解説します!

【参考記事】「ご覧いただく」は使っちゃいけない敬語なの?

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