謙譲語"伺う"の意味/使い方とは?類語&目上への例文|ビジネス敬語ガイド
「伺う」の意味とは?
「伺う」とは「聞く」「尋ねる/問う」「訪れる」の3つの意味を持つ謙譲語になります。
「伺う」は、「のぞき見る」意味の「窺う」と同じ語源を持ち、目上の人の様子をそっとうかがい見る意味からきた言葉です。現在では相手にきちんと自分の存在を明らかにして、自分の行動をへりくだっていう敬語になります。
また、「伺う」は相手の話や意見を聞いたり、こちらから相手に何かを尋ねるときや、相手がいるところへ出向く場合にも使います。
ビジネスで使われる語彙として、さらに、日常的に使う敬語としてもかなり基本的な言葉になるので、使い方をきちんと押さえておきましょう。
「伺う」は、目上の人にも使える敬語表現なのか?
「伺う」は謙譲語になり、社外の取引先や顧客、社内の上司のような目上の人に対して使用できます。
「伺う」が使えるのは、直接対面してや電話越しでの会話、ビジネスメールなどの文書で使うのが一般的です。具体的には、取引先や顧客と会う約束を取りつける際や、上司の元へ向かう際、社内会議や社外の人と面談する際に使ったりします。
「伺う」は頻繁に使われる敬語のため、使い方に注意すべき点をしっかり押さえて、相手との円滑な関係を築きましょう。
「伺う」を使う上での注意点とは?
伺うの注意点① 二重敬語を覚えておく
「伺う」は謙譲語にあたる敬語で、「お伺いさせていただく」「お伺いいたします」「お伺い申し上げる」といった表現は二重敬語になります。
敬語には主に尊敬語と謙譲語がありますが、同じ種類の敬語を重ねて用いると、くどい印象になるため「二重敬語」を忌避するのが普通です。しかし、「お伺いする」の「する」が一般的な語の「する」の意味とだぶり、丁寧さに欠けるとの印象を持つ人が出てきています。
そのため、これらの表現は現在では頻繁に使われており、明らかに失礼とみなす人も少なくなってきていることから、こういった表現を使用しても特に大きな問題はないでしょう。
「伺う」の正しい使い方とは?
二重敬語は同種の敬語を重ねて使うことで、まわりくどい表現になって敬遠されるため、できるだけ避けるのが賢明です。
もともとが謙譲語の言葉であれば、「いたす」「いただく」を重ねないこと、尊敬語であれば「なる」を重ねないようにすると敬語の誤用が避けられるのではないでしょうか。
したがって、「伺う」も「伺います」や「お伺いします」に留めておくのがベターです。
伺うの注意点② 社外で人と会っている場合、社内の人に使わない
敬語は相手との相対的な関係性により、適切な使い方が決まってきます。例えば、社外の顧客と会っている時に、仕事仲間の社内の人間に敬語を使うと、大切な顧客を自社の人間より低く扱うことになり不適切です。
顧客や社外の人などと話す際は、たとえ上司であっても仕事仲間にあたる社内の人間に対しては、自分と同様に謙譲語を使い相手と話すように使い方に気をつけましょう。
ビジネスメールで社外の人に自社の人間の動向を伝える場合も、自分と同様に謙譲語を使います。
「伺う」の正しい使い方とは?
例えば、社外の人と「聞く」について表現する場合、「部長の○○が伺うと申しております」という敬語の使い方をします。
たとえ顧客の前に社内では敬語を使う上司と同席していても、このように話すのが正しいです。「○○部長がお聞きになるとおっしゃっています」とするのはその場にそぐわない表現なので注意しましょう。
ビジネスシーンでの「伺う」の正しい使い方/例文
伺うの使い方|聞くの意味
- 勉強会では興味深い意見を伺うことができ、大変参考になりました。
- お客様の連絡先はお伺いしておりましたので、後ほどかけ直します。
- ○○の件については先ほど部長よりお伺いしました。
- そのお話は伺っております。
- 「会議の時間変更の件は聞いていますか。」「○○さんから伺っております。」
- ご高名はかねがね伺っております。
「伺う」を「聞く」の意味として使えるのは、直接誰かの話を聞いたときや、特定の物事に対して誰かから伝聞で聞いたとき、噂を耳にしているといった状態を表す際です。
「聞く」でももちろん意味は通じますが、「伺う」とすることで話し手に敬意を表す丁寧な言い回しになります。「伺う」は相手が話を切り出すときに「お伺いします」と聞く意思があることを伝えたり、例文のように、相手が話した後で「聞いた」という意味で使います。
伺うの使い方|尋ねるの意味
- 先日お送りいただいた資料についてお伺いしたく、ご連絡差し上げました。
- 先生のご意見をお伺いしたく存じます。
- ちょっとお伺いしたいのですが、新宿行きの電車はこのホームから出発しますか?
- ひとつ伺いますが、マイナーチェンジということで内部は従前と同じ機構ということですか。
- 詳しく伺いたいので、午後からではご都合はいかがでしょうか。
- 商品についていくつかお伺いします。
「伺う」は何かを聞く際の前置きとして、例文のように「伺いますが」「お伺いしたいのですが」「お伺いしたく」などと使います。
尋ねた後に「伺う」を使った場合は「聞いた」という意味になるため、文脈によって相手が自発的に話したのか、話者から尋ねたのかを判断しましょう。
話し手が相手に問うような働きかけをしたかどうかは、「伺う」の語だけでは判断がつきかねる点があります。しかし、「伺う」は相手が話してくれた内容を重視するので特に問題としません。
伺うの使い方|訪問する/訪れるの意味
- もしお差し支えなければ、直接伺いましてご説明申し上げます。
- それでは、明後日の10時にお伺いするということではいかがですか。
- かしこまりました。明後日にお伺いしますのでよろしくお願いします。
- 至急そちらにお伺いしますので、少々お待ちいただけますか。
- 申し訳ありません。明日は先約がございましてお伺いいたしかねます。
- 〇課の○○様と〇時のお約束で伺いました〇〇と申します。
「訪れる」の意味で使う「伺う」は、相手先へ訪問の約束をするときや、こちらから先方に向かうことを申し出るときなどに使います。
相手先に向かっている道中では普通「伺う」を使いません。相手先への訪問が済んだ後にも「伺う」を使えますが、例文のように訪問の約束をする際に使う機会が最も多いでしょう。
「伺う」は電話で相手と話したり、メールでやり取りするときにもよく使われます。相手の貴重な時間をいただくことになるので、訪問の日にちや時刻もあわせて伝えるようにしましょう。
「伺う」と「参る」との違いとは?
「参る」とは話し手が「行く」「来る」行為をへりくだっていう謙譲語です。「伺う」は相手のいるところに行く意味なので、敬意を払う相手の存在がなくては成立しません。
「参る」の場合は純粋に話し手の行為をへりくだっていう表現なので、敬意を払う人物がいるかどうかは不問です。例をあげるなら、「東京に参ります」と使えても、「東京に伺います」とすると不自然になります。「伺う」は相手の存在を強く意識した言葉ということに留意してください。
「参る」の丁寧な例文
- 総務課まで備品を取りに行って参ります。
- お待たせして申し訳ありません。○○はまもなく参りますので、今しばらくお待ちいただけますか。
- 当日は私の代わりに部下の○○が御社へ参ります。
- 3連休を利用しまして、新幹線で北海道まで参りました。
「参る」は、これから目的地に向かうことや行く予定を伝えるとき、ある場所にやって来た後に使います。
向かっている道中は「参っている」とはしません。「参る」を使うことで、聞き手に敬意を示していることを表すため、非常に丁寧な印象を持たれます。丁寧な話し方をすることで、ビジネスでなくても相手との円滑な関係を築きやすくなるでしょう。
「伺う」と「窺う」との違いとは?
「窺う」は「伺う」の同音異義語で、同じ語源を持ちますが、類語ではなく全く意味の違う言葉です。「窺う」は「のぞき見る」「こっそり様子を探る」「状況を察する」「機会をじっと待つ」などの意味を持ちます。
一番目と二番目の意味としてはビジネスで使うことはほとんどないでしょう。「窺う」は常用漢字ではないので多くの人に馴染みがないこともあり、使用する際は「うかがう」としたほうがベターです。いずれにせよ、「伺う」に比べると使用頻度が少ないです。
「窺う」の丁寧な例文
- 出社したところ、建物が閉まっていたので窓越しに様子をうかがったところ誰もおらず、休日に出社したことにようやく気づきました。
- 子どもの様子が気になり、それとなく様子をうかがっていました。
- サンプル品を取り寄せてみたところ、完成度が非常に高く、技術力の高さがうかがえます。
- いつ市場に投入するか機会をうかがっております。
ビジネスは不確定要素が絡むことが多く、限られた情報をもとに推測や予測を行い、判断することも必要です。「窺う」を使う場面としては以下のようなものが考えられます。
外部からは窺いしれない他社の内部事情を、販売している製品や受けたサービス、スタッフの様子から推し量って伝えたり、ビジネスチャンスが訪れる機会を窺っていることを報告する際などです。
「伺う」と言い換えできる類語一覧
伺うの類語① 承る
「承る」は「引き受ける」という意味でよく使われる「受け賜わる」を由来とする謙譲語です。
ほかにも、「伺う」と同じような「謹んで聞く」「拝聴する」や、「伝え聞く」といった意味も持っています。ビジネスの現場では、不在者に代わって相手の要件や伝言を聞いたり、消息を本人から直接ではなく伝聞で知った場合に使ったりすることが多いです。
「承る」は何らかの依頼・要請を承諾することも含意するため、「伺う」と違い、何らかの業務を遂行する義務を伴うこともあります。
「承る」の使い方
- あいにく○○は席を外しておりまして、よろしければ私にてご用件を承ります。
- 営業の○○から○○部長が日本に帰国されたと承りました。
- 「それでは○○様にお伝えいただきたいことがあるのですが。」「かしこまりました。ご伝言を承ります。」
【参考記事】「承る」の意味や正しい使い方とは▽
伺うの類語② お目にかかる
「お目にかかる」は「会う」の謙譲語です。「伺う」とはやや意味が異なり、「伺う」のように相手のいるところに出向いて行ったり、相手の話を聞くといった深いかかわりを示唆する意味合いはありません。
「お目にかかる」は「話し手にとり、なかなか会えない重要人物に会うことができた」意味になり、大きな敬意を持って接しなければならない相手に対して使います。例文のように、相手に会ったときに直接挨拶として謝意とともに使ったり、会いたいとの願望や希望を伝える際に使うことが多いです。
「お目にかかる」の使い方
- お噂をかねがねお伺いしております。○○様にお目にかかれて光栄でございます。
- 初めてお目にかかります。××と申します。よろしくお願いいたします。
- ○○様にまたお目にかかれる日を楽しみにしております。
伺うの類語③ 拝聴する
「拝聴する」は「聞く」の謙譲語で、「拝」には頭を下げて敬礼することや拝むことになり、「謹んで聞く」という意味のかしこまった語です。そのため、“聞く”の意味合いとして言い換えが可能です。
ビジネスで使う場合は目上の人や社外の人の発表や講演、意見などを聞くときに使ったり、聞いた後にお礼の言葉とともに使ったりします。
「拝聴」に丁寧語の「ます」をつけるだけでじゅうぶん敬意を表せるのですが、ほかの謙譲語と同様に、「いたす」「させていただく」をつけた二重敬語の用法も散見されます。
「拝聴する」の使い方
- 今後のヒントになるアドバイスを拝聴でき、参考にさせていただきたいと存じます。
- お集まりの皆様からのご意見をありがたく拝聴し、今後の運営に生かしてまいる所存です。
- 会長の訓示をありがたく拝聴しました。
【参考記事】「拝聴する」の意味から正しい使い方までをまとめました▽
伺うの類語④ お聞きする
「お(ご)~する」は謙譲語の一形式で、「お聞きする」で「聞く」の謙譲語表現になります。
「伺う」は基本的には相手のいるところに行って「話を聞く/尋ねる」意味になるのに対し、「聞く」は移動を含意せず、ただ「聞く」という動作にのみ焦点を当てた語です。「聞く」という日常でよく使われる平易な語のため、二重敬語の誤用もほぼ聞かれません。
例えば、相手に「聞かせてほしい」という時に「お聞きさせていただく」というような例は、明らかな誤用として認識されます。
「お聞きする」の使い方
- ぜひお客様の忌憚のないご意見をどうかお聞かせください。
- お寄せいただいたご意見ですが、さらに詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。
- 栄転先でもご活躍とお聞きし、さすが○○先輩と感服いたしました。
伺うの類語⑤ お邪魔する
「お邪魔する」とは「相手のところに行く、訪問する」という意味です。「邪魔」とは妨げになることや物を意味し、「お邪魔」とは「邪魔」をやや茶化した表現で、他人の家を訪問することをいいます。
日常で使われる「お邪魔する」を、ビジネスでは例文のように訪問先を訪れた際や、訪問先から帰る際の挨拶として使うことがあります。相手との関係性をある程度構築してからでないと慣れ慣れしいと思われるため、初対面の相手やかしこまった場では使用を避けましょう。
「お邪魔する」の使い方
- 来週くらいにお邪魔させていただくかもしれません。その際は何卒よろしくお願いいたします。
- 商品サンプルをお渡しするため本社に伺いますので、○○様のいる工場のほうにもお邪魔するかもしれません。
- (招き寄せられて)「お邪魔します」
伺うの類語⑥ お尋ねする
「お尋ねする」は「尋ねる」に「お(ご)~する」をつけた謙譲語です。
類語の「伺う」の「相手に尋ねる」と同義になり、ただ単に相手の話を聞くのではなく、相手に何かを質問したり、探し求めているものを相手から聞き出すときに使います。「尋」の含意は「尋問」など強く探し求める意味です。
そのため、「お尋ねする」は謙譲語ですが、例文の印象からも感じるように、丁寧さにはやや欠けるきらいがあるのは否めません。自分に「尋ねてほしい」と申し出る場合は別ですが、目上の相手に使うと失礼だと受け取られる恐れもあり、使用は避けたほうが無難です。
「お尋ねする」の使い方
- お尋ねしますが、○○は○○ということなのでしょうか。
- ~についてお尋ねしたいのですが、どちらの部署に行けばよろしいでしょうか。
- 説明したなかでご不明点がございましたら、遠慮なくお尋ねください。
「伺う」の英語表現
- come(訪れる)
- visit(訪れる)
- call on(訪れる)
- ask(問う)
- inquire(問い合わせる)
- hear / be told(聞く/聞きました[伝聞表現])
「伺う」には3つの意味があることから、その意味に応じた英単語を各々選択する必要があります。
比較的平易な単語が多いですが、文脈や使い方次第ではメールやきちんとした場で使うことも可能です。
「come」は話者が意識している地点に「行く」「来る」という意味で、相手のいる場所を話者が想定している場合は、相手のもとに「行く」「伺う」 となります。
「伺う」は意味が多いため、上手に使い分けましょう!
「伺う」について例文や使い方、類語にいたるまで詳しく解説しました。「伺う」は「聞く」「尋ねる」「行く」の3つの意味を持つ謙譲語で、電話やメールなどでも頻繁に使います。
移動を表す語でもあるため、顧客など敬語を使うべき相手の前で社内の者に「伺う」を使う誤りがよく起こりがちです。顧客を前にしたら、原則、社内の人間は自分と同じように謙譲語を使うと覚えておきましょう。
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