"ありがたく存じます"と言い換えできる丁寧な類語一覧|ビジネス敬語ガイド
「ありがたく存じます」の意味・使い方とは?
「ありがたく存じます」とは、「ありがとうと思っています」と意味するより丁寧な敬語表現になります。
文法上は謙譲語となり、何かの好意を受けた相手方に敬意を示す言葉となっています。簡単に言うと、「嬉しいです」という表現に近いと言えるでしょう。
「ありがたく存じます」の使い方のタイミングとしては、普段暮らす中では、なかなか体験することのない行為を受けた際などに用います。例えば、自分が入院した際に、既に退職した会社の上司がお見舞いに来てくれた場合などが挙げられます。
「ありがたく存じます」の距離感は、やや自分が距離を感じる方で、お世話になっている方にかける言葉という認識だと捉えておくと良いでしょう。
「ありがたく存じます」と「ありがたく存じ上げる」の違いとは?
ありがたく存じますという表現を、より丁寧にした表現として「ありがたく存じ上げる」というものがあります。ありがたく存じますと意味合いは同じですが、ありがたく存じ上げるの方がより丁寧な表現だと言えます。
注意点としては、ありがたく存じ上げるは、ビジネスシーンではあまり用いません。それは、似たような表現に「存じ上げております」という表現があるからです。
「存じ上げております」という表現は、「知っています」を丁寧に言い換えたものです。「ありがたく存じ上げる」にも存じ上げるという言葉が使われており、混同されやすい表現になります。そのため、時に誤解を招くおそれがあることから、ビジネス上では使わない方が良いとされています。
「ありがたく存じます」と言い換えできる類語一覧
「ありがたく存じます」と同じく感謝を伝えられる類語表現は数多く存在します。
ここからは、「ありがたく存じます」と言い換えできる類語表現を徹底解説。
- 幸いです(幸いに存じます)
- 幸甚に存じます
- 痛み入ります
- 感謝申し上げます
- 光栄です
- 恐縮です
- 恐れ入ります
- とんでもございません
各類語の使い方、例文までしっかりと確認していきましょう。
ありがたく存じますの類語① 幸いです(幸いに存じます)
ありがたく存じますの類語に「幸いです」という敬語があります。丁寧に言い換える場合は「幸いに存じます」という類語もあります。
文章全体の意味合いでニュアンスが異なりますが、「嬉しいです」と「ありがたいです」という2つの意味合いを持つ表現です。
基本的には文末に用い、自分の行為が相手の役に立てば嬉しいというニュアンスで用いる場合と、相手方に何かをやんわりとお願いするニュアンスで用いる場合があります。ビジネスでも目上の人には用いず、対等な関係にある人に対して用いる言葉になります。
「幸いです(幸いに存じます)」の例文
- 昨日お送りしたメールの内容ですが、ぜひ一度ご検討いただければ幸いです。
- 先月お中元に送ったメロンですが、お気に召したようで幸いです。
- お忙しいところ恐縮ですが、お力をお貸しいただければ幸いに存じます。
【「例文」で使われている敬語】
・「幸いに存じます」の使い方|目上にも使える敬語を使った丁寧な例文とは?
ありがたく存じますの類語② 幸甚に存じます
幸甚に存じますという類語は、「幸いです」を、より丁寧に言い換えた敬語になります。
「幸いに存じます」よりも丁寧な表現にはなりますが、ビジネスシーンでは堅苦しく感じられる使い方でもあることから、状況によっては「幸いに存じます」の方を用いることも多いです。
幸甚に存じますという敬語は、目上の人に用いるものです。取引先などの対等な関係にある立場の人には用いません。しかし、社長クラスの人と話をするような場合は、用いることも想定しておく必要があるため、以下に紹介する例文を覚えておくことも大切です。
また、社内では上司や役職者に送るメールなどに用いますが、関係性ができているのであれば、幸いに存じますの方が自然だと言えます。
「幸甚に存じます」の例文
- 明日のプレゼンの資料ですが、お時間が許せば今一度ご確認いただけると幸甚に存じます。
- 今回の人事につきましては、やはり今一度ご検討いただきたく、再度資料をご検討いただけると幸甚に存じます。
- 新計画の詳細につきまして、お送りしたメールをご高覧いただけましたら幸甚に存じます。
ありがたく存じますの類語③ 痛み入ります
ありがたく存じますの類語の「痛み入る」という敬語は、しばしば誤解を招く表現だとも言えます。なぜなら、「痛む」という言葉が含まれていることから、ネガティブな意味合いにとらえられることがあるからです。
ビジネス上の同僚とは「ご忠告痛み入るね」などと皮肉を込めて使われることもありますが、これは正しい使い方ではありません。
痛み入るは、相手方の「過分な心遣いに(心が痛むほど)恐縮している」さまをあらわします。幸いに存じますとの違いは、若干こちらが申し訳なく思っているニュアンスに言い換えていることです。
比較的古風な敬語になりますが、目上の人に対する使い方としては良い意味合いでとらえられます。適切な使い方として、以下のような例文があります。
「痛み入ります」の例文
- この度は突然のお願いごとにもかかわらずご快諾いただき、誠に痛み入ります。
- 入院中は過分なご配慮をいただき、お見舞いまで頂戴し誠に痛み入ります。
- 昇進にあたり、身に余るお褒めのお言葉を頂き、誠に痛み入ります。
【「例文」で使われている敬語】
・「ご配慮」は目上にも使える!上司に使える定番の例文を詳しく解説
ありがたく存じますの類語④ 感謝申し上げます
感謝申し上げますは、ありがたく存じますと似た意味を持つ類語です。
自分が「嬉しいです」という感謝の気持ちを述べるときに使用する敬語で、謙譲の意味合いを持ちます。よって、目上の人やビジネス上の取引先などに対して用いられます。
ありがたく存じますとの使い方の違いは、利用する場面にあります。
ありがたく存じますは、状況によっては「~してくれると嬉しいです」という意味合いで用いられますが、「感謝申し上げます」は「~していただいてありがとうございます」というニュアンスを、より丁寧に言い換えたものになりますので、必然的に感謝を伝える場面での使い方に限られます。参考として、以下の例文を見てみましょう。
「感謝申し上げます」の例文
- 弊社での開発にご尽力いただき、心より感謝申し上げます。
- 全国でお力添えをいただいた会員の皆様に対し、心より感謝申し上げます。
- 当社の商品をご購入いただき感謝申し上げます。今後とも当社をよろしくお願い申し上げます。
【「例文」で使われている敬語】
・「感謝申し上げます」の意味/使い方|上司や取引先など目上の人に使っても良い?
ありがたく存じますの類語⑤ 光栄です
光栄ですという類語は、名誉・誇りに思うことを伝える敬語になります。
伝え方としては、ビジネス上の業務やボランティアなど、何らかの行為を他者に対して行った際、その仕事ぶりを高く評価してもらった場面などで、へりくだった形で回答する場合に用います。
ありがたく存じますという敬語と意味合い自体は同じですが、話す側にもある程度の自信があり、それを控えめに伝えるというニュアンスが含まれています。
より丁寧な表現を用いるとしたら「光栄に存じます」などがありますが、目上の人に使う際は慇懃無礼な印象を与えることもあるため、やはり「光栄です」が無難だと言えるでしょう。使い方に迷った場合は、以下の例文を覚えておくと良いかもしれません。
「光栄です」の例文
- お噂はかねがねうかがっておりました。本日はお会いできて光栄です。
- 私のような者がそのようなお言葉をいただけましたこと、身に余る光栄です。
- ○○様のおかげでプロジェクトがようやく軌道に乗りました。一緒にお仕事をさせていただけて光栄です。
【参考記事】「光栄です」の使い方から類語まで詳しく解説します▽
ありがたく存じますの類語⑥ 恐縮です
ビジネスシーンでよく使う敬語の一つで、話し言葉などでも使われることが多い類語になります。本来の意味は「身も縮まるほどに恐れ入ること」になりますが、時代を経てありがたいという言葉として用いられるようになりました。
自分に対する過分な心遣い、対応はもちろん、社交辞令としての軽い意味でも頻繁に用いられる類語です。そのため、同じように感謝・依頼などの意味合いで用いられる「ありがたく存じます」と比べると、頻繁に耳にする類語だと言えます。
上司やメール上でも使いやすい敬語なので、しっかりと意味を理解したうえで、以下の例文をもとに活用しましょう。
「恐縮です」の例文
- 身に余る高評価を賜り、社員一同大変恐縮致している次第でございます。
- お忙しい中、お時間を割いていただきまして恐縮です。
- 皆さまから受けたご厚意- ご親切- 励ましのお言葉の数々、ただただ恐縮するばかりでございます。
【「例文」で使われている敬語】
・「恐縮ですが」の意味から正しい使い方を詳しく解説します!
ありがたく存じますの類語⑦ 恐れ入ります
「恐れ入る」という類語には複数の意味があり、もともとは「大変恐れる」という単純な使い方をしていました。
それが次第に、過ちを悟って詫びる場合や、何かをしてもらったときにありがたいと思う場合、相手の力量・実力に圧倒され屈した場合などに用いる敬語になったのです。
ビジネスシーンでは、目上の人への問いかけや、他者から評価されたことに対しての謙譲表現として用いられます。クッション言葉としても有名で、接客業では頻繁に使われることが多い敬語です。以下に紹介する例文を頭に入れておけば、さまざまなシーンで便利になることでしょう。
「恐れ入ります」の例文
- 機内の安全のため、恐れ入りますがシートベルトをお締めくださいませ。
- 本来であれば当社でご用意すべきところ、段取りを事前に全て組んでいただき、大変恐れ入ります。
- 恐れ入りますが、先日お願いしておりました書類は全てお揃いでしょうか?
ありがたく存じますの類語⑧ とんでもございません
「とんでもございません」という敬語は、2007年に文科省直属の「文化審議会」が利用して問題ないという指針を発表するまで、長らく日本語として誤った使い方であるとされてきました。
しかし、謙譲表現としてビジネスシーンで多用する場面が多く、話し手・聞き手ともに気分を害さずやり取りができることから、一般的に広く浸透してきました。
意味合いはどちらかというと「恐縮です」や「恐れ入ります」が近く、過分な評価を強くへりくだる意味合いとして用いられます。
よって、ありがたく存じますという表現からは若干遠い意味合いとなりますが、以下の例文のようなシチュエーションで、目上の人に用いるケースが多いようです。
「とんでもございません」の例文
- 「新しいプロジェクトのリーダーになって欲しい。」
「とんでもございません。私は人の上に立つ器ではございません。他の方をお選びください。」 - 「いつも助けてくれてありがとう。」
「とんでもございません。こちらこそいつもありがとうございます。」 - 「財布を拾ってくれて助かりました。」
「とんでもございません。困った時はお互い様です。」
【参考記事】「とんでもございません」の使い方から類語まで解説します。▽
「ありがたく存じます」を用いた例文一覧
- 可能であれば、お目通りの機会をいただけると、大変ありがたく存じます。
- この度の当方へのお心遣い、誠にありがたく存じます。
- 遠いところわざわざご足労いただき、ありがたく存じます。
- 平素よりただならぬご厚情をいただき、誠にありがたく存じます。
ありがたく存じますという表現は、「ありがたい」「嬉しいです」という感謝・喜びの意味を丁寧に伝える意味合いを持っています。しかし、上記の例文のように「こうしてくれたら嬉しい」というような、話し手の希望を伝える控えめな表現としても用いられます。
いずれの例文の場合も、相手に対しての尊敬と敬意を含んだ表現だと言えるでしょう。基本的には目上の人に用いるものですが、関係性に留意さえすれば、多くの日本人にとってメールなどでも使いやすい表現ですので、自分なりの例文をいくつか作っておくこともおすすめです。
【「例文」で使われている敬語】
・「ご厚情」の正しい使い方って?目上に使える例文までまとめました
「ありがたく存じます」は丁寧に伝える。
「ありがたく存じます」を含めて感謝の言葉は、丁寧に伝えることが大切です。
ビジネスメールはもちろん、対面で伝える際にも「相手がどう受け取るか?」を考えた上で使うことを心がけましょう。
【参考記事】「送らせていただきます」の使い方を例文付きで解説します▽
【参考記事】「ご確認ください」は目上の人にも使える敬語なのか?▽
【参考記事】「ご査収の程」を使った丁寧な例文を解説します▽
大切な人にシェアしよう。Enjoy Men’s Life!