"できかねます"の意味/例文。"いたしかねます"の違い|ビジネス敬語ガイド
「できかねます」の意味とは?
「できかねます」という言葉は、「できません」という言葉の丁寧な表現です。顧客や取引坂などのビジネスの場では、丁寧な言い回しをしなければなりません。
「できません」という言い方では、唐突で乱暴な印象を与えやすく、ふさわしくないため、「できかねます」という表現が適切になります。
また、クライアントへの対応だけではなく、社内における上司への言葉としても利用できます。このように、相手にたいしてやんわりとした表現で、穏便に拒否したい場合に使われる言葉です。
ただし、使い方を間違えてしまうと、相手に対して失礼な言葉となることがあるので注意する必要があります。
「できかねます」の使い方とは?
「できかねます」は、相手に対してきっぱりと「できません」と断れない時に使用します。本来であれば、できない場合は「できません」と答えるべきです。
しかし、親しい友人であれば「できません」でも構いませんが、ビジネスの場において目上の上司やクライアントに対してだと、立場上そのように答えられないことが多いです。
そのような場合に、相手に対して失礼にならないよう、「できかねます」と丁寧語を使うことでできるだけ丁寧に断ることが可能となります。
「できかねません。」は間違った敬語表現。
ビジネスシーンにおいて、時折「できかねる」を「~できかねません」として使ってしまう方がいます。
これは文法として間違っており、全く意味の分からない言葉になるので注意が必要です。
動詞の連用形として「かねない」と否定の言葉を当ててしまうと、悪い意味の「推量」の意味になってしまいます。
たとえば、「対応できかねません。」という言葉は、「もしかすると対応できてしまうかもしれません。」という意味になるのです。
動詞の連用形として「かねる」を使うだけで、「否定」の意味となるため、できない場合は「対応できかねる」というように使うようにしましょう。
「できかねます」の例文とは?
- A:御社の創業者と来週お会いしたいのですが、アポイントをお願いします。
- B:すでに予定がつまっており、その要望はお受けできかねます。
- A:インターネットで、発送が来週となっていました。急ぎで部品がないと困るので、別料金でも構わないので、本日中に発送することは可能でしょうか?
- B:非常に申し訳ございませんが、こちらの商品はすべて受注生産となっているため、本日中の発送はできかねます。
- A:○○という商品の今期の売上が減少している理由を教えてくれないか?
- B:申し訳ございません。その商品は、現在出張中の○○の担当となるため、私では説明できかねます。
最初の対話文は、取引先などからの要望の問い合わせの電話やメールに対する返答です。すでに、スケジュールがいっぱいで、新たなアポイントを取ることができない場合に「できかねます」という言葉を使っています。
2つ目は、早めに送ってほしいという顧客からの電話やメールでのお願いに対して、どうしても応対できない場合に使用されることが多いです。
最後は、目上の上司が部下に対して説明を求めている場合に、当該部下では回答できない場合などに使われます。
例文に限らず、「できかねます」は様々なシーンで使えるため、例文を元に組み替えてみるといいかも。
「できかねます」は、クッション言葉を使うと優しい言い回しになる。
「できかねます」という言葉は、「できません」をできるだけ柔らかくするために使われる言葉ですが、単純に使ってしまっても目上の上司や取引先に失礼だと取られる恐れがあります。
そのため、「できかねます」を使う場合は、クッション言葉をつけて使用することが望ましいです。
ビジネスシーンにおいては「申し訳ございませんが」というようなクッション言葉を使うことで、相手に対して無碍に扱っているのではなく、応対したいけどもできないというような印象を与えれます。
クッション言葉と「できかねます。」で構成された例文
- 非常にありがたいお話なのですが、特別昇進という御提案は、立場上お受けできかねます。
- せっかくのお申し出なのですが、取材に関しては機密情報に当たりますので、応対できかねます。
- 大変申し訳ございませんが、保証期限を越えた修理につきましてはお受けできかねます。
- お心苦しいのですが、申し込み定員に達しましたので、受付できかねます。
【参考記事】「申し訳ございません」は間違い?正しい使い方を解説▽
もっと優しい言い方にするなら、否定ではなく、肯定文にする。
「できかねます」は、「できない」の敬語としての役割で利用できます。
目上の上司や取引先に対して、やんわり断ることができるのですが、場合によってはただ拒否されたことだけが印象に残ってしまう恐れがあります。
特にメールや電話などでの応対では、感情が伝わりにくいです。そのため、「できかねます」と否定の敬語を使うのではなく、「○○ならできます!」といったような、相手に対して代替案をだすことで、心証を崩すことなく新たなチャンスをつかむことができる場合もあります。
「できかねます」と「いたしかねます」との違いとは?
「できかねます」と「いたしかねます」は、両方とも否定の意味があり、その違いは単純に丁寧語の表現であるか、敬語の表現であるかの違いです。
また、「いたす」というのは、謙譲語で「する」という表現になります。つまり、「いたしかねます」という表現は敬語の中でも謙譲的な表現となるのです。
もし、目上の上司や取引先などで、より敬意を表したい場合には、丁寧語である「できかねます」よりも、敬語の「いたしかねます」のほうが、よりビジネスの場では適切であると言えるでしょう。
「いたしかねます」を使った言葉例
- 承りかねます
- わかりかねます
- お応えいたしかねます
どの敬語表現も様々なシチュエーションで使われるため、「できかねます」の使い方と共に確認しておくと良いでしょう。
「できかねます。」の類語
できかねますの類語① 困難な状況でございます。
「できかねます」の類語としてよく使われる言葉です。丁寧語である「ございます」を使うことによって、敬語として表現しています。
シンプルにできませんというよりも、応対することが難しいと表現することで、相手からの提案や要望に対して、完全に否定するのではなくやんわりと角が立たないようなニュアンスになるのです。
ビジネスシーンにおいては、電話だけではなく、ビジネスメールなどでも使いやすい敬語表現の使い方といえるでしょう。例文を交えながら使い方をご紹介します。
「困難な状況でございます」の使い方
- ご招待いただきました式典につきましては、出席することが困難な状況でございます。
- ご提案いただきました改善案については、ご要望にお応えすることが困難な状況でございます。
- ご希望納期に間に合わせることは困難な状況でございます。
できかねますの類語② 見送らせていただきたく存じます
同じような類語で「見送らせてください」という丁寧語もあります。
若干フランクな言い回しであるため、多少親しい間柄では問題ありませんが、一般的なビジネスシーンでは適さないとされています。
そのため、より敬語表現での使い方として、「見送らせていただきたく存じます」という言い回しが生まれました。
相手からの提案や申し出などに対して、断る際に利用されることが多いです。また、選考関係の仕事でのお断りのメールや電話でも使いやすい類語といえるでしょう。
「見送らせていただきたく存じます」の使い方
- 頂いたご提案は大変参考になりましたが、今回は仕様の変更を見送らせていただきたく存じます。
- 式典に参加する予定をしておりましたが、社内でのトラブル対処のため残念ながら見送らせていただきたく存じます。
- 慎重に検討をさせていただきました結果、今回御社の製品の採用を見送らせていただきたく存じます。
【「例文」で使われている敬語】
・「存じます」の意味から正しい使い方まで簡単に説明していきます
できかねますの類語③ 難しいです
やることができないという「難しい」という言葉に丁寧語である「です」をつけた類語表現です。
できないことをはっきりと伝えながらも、ビジネスの場にふさわしい言い回しの使い方となっています。
「できかねます」よりも多少カジュアルな表現となっているため、対等な取引先などに対する使い方としては問題ありません。
しかし、自分たちよりもビジネス上の立場が上の取引先に対しては、失礼ととられる可能性があるので注意が必要です。
「難しいです」の使い方
- ご指示頂いた内容につきまして、私の方で対処することは難しいです。
- ご相談いただきました設計につきましては、分野が違うため弊社で作成することが難しいです。
- せっかくお誘いいただきましたが、スケジュールがつまっており参加が難しいです。
できかねますの類語④ ご遠慮申し上げます
特に、相手からのお誘いを断る際に使われることが多い類語表現です。
遠慮というのは、相手のことを考慮して断ることを目的とした言葉です。
ビジネスの場のニュアンスとしては、「大変光栄に思うのですが、恐れ多くも遠慮させていただきますので許してください。」というようなイメージの表現です。
つまり、お誘いに対して断ること自体失礼だけれどもどうしても参加できない時などに、よりへりくだった敬語として使われることが多いです。
「ご遠慮申し上げます」の使い方
- 先般ご招待いただいた祝賀会ですが、あいにく先約があるため今回はご遠慮申し上げます。
- 打診いただきました表彰の件、私だけの努力ではありませんのでご遠慮申し上げます。
- 本日ちょっと子供が熱を出してしまったため、食事会はご遠慮申し上げます。
「できかねます」の英語表現
- I'm afraid 〜(残念ながら~できかねます。)
- I'm sorry 〜(申し訳ございませんが~できかねます。)
- I will not be able to accept ~(~にお応えすることはできません。)
- I can not~(~いたしかねます。)
- It is difficult for us to ~ (~をさせていただくのは難しい。)
- We regret to say that it is difficult for us to~(~するのは難しいです。)
英語表現の中でも、ビジネスで一般的に利用されるのが、「I'm afraid 〜(残念ながら~できかねます。)」です。
比較的親しい間柄の取引先から、目上の上司や取引先にまでも使える英語表現です。
一方で、顧客からの要望や、提案などの際にメールで返信する際には、「I will not be able to accept ~(~にお応えすることはできません。)」のような英語表現が使われやすいです。
「できかねます」は、使い方に注意して使おう。
「できかねます」という表現は、相手からの要望等を「できません」とバッサリ切るのではなく、
柔らかく断りを入れる際に使われる敬語表現です。比較的使いやすい言葉ですが、場合によっては失礼にとらえられる恐れもあります。状況によっては、より丁寧な表現である「いたしかねます」やその他の類語を適切に使い分けるようにしましょう。
【参考記事】「できかねます」の類語として使える"結構です"の使い方とは?▽
【参考記事】相手へ失礼なお願いをする時は「不躾」を上手に使おう▽
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