"益々(ますます)"の意味/使い方。例文&言い換え類語|ビジネス敬語ガイド
「益々(ますます)」の意味とは?
「益々」とは、動詞の「増す」を重ねた語で、「程度が今よりもさらに大きくなる様子」を意味する言葉です。
日常、ビジネスを問わず広く用いられます。日常生活では「益々気温が上がる」「老いて益々お盛んですね」のように、天候や相手の体調を表すときに使われ、ビジネスでは「益々のご発展を心よりお祈り申し上げます」のように、取引先が今よりもさらによい状態になることを表現する際に使います。
日常生活では「益々風が強くなる」のように、マイナス面のことを表す場合にも使われますが、ビジネスシーンにおいて、マイナスの意味で使われることはほとんどありません。
「益々」は、目上の人にも使える敬語なのか?
「益々」は目上の人に対する敬語表現とともに使っても問題はありません。ただし、「益々」に続く言葉の使い方には要注意。
たとえば、目上の人に対するスピーチや手紙の最後に、「今よりもさらに活躍を願っています」という趣旨のことを述べたいとき、「益々のご活躍を楽しみにしています」は正しい表現とは言えません。
正確には「益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます」のように尊敬を表す接頭語の「ご」、謙譲語の「~申し上げる」、丁寧語の「ます」のような敬語を使い、相手に敬意を表すようにしましょう。
日常生活では、”ひらがな表記“を使用する。
日常生活で手紙やメールにこの表現を使うときは、敬語表現の中で使う場合でも「ますます」とひらがなを使うことが多いです。
一方、ビジネスシーンでの文書やメールでは、「益々」と漢字で書き表す傾向に。こうした使い方をする理由は、文字が与えるイメージの問題にあります。
読み方は同じですが、ひらがなを用いると柔らかい感じになり、漢字を用いるとかっちりした印象を与えられるからです。
「益々」と一緒に使われる敬語一覧
益々と一緒に使う敬語① ご活躍
「活躍」は「めざましく活動する」の意味です。尊敬を表す接頭語「ご」をつけて、相手の活躍について述べるときに「ご活躍」を用います。「ご活躍」は丁寧な表現なので、敬語と一緒でも単体でも関係なく使える表現です。
スピーチや手紙、メールの結びには相手の今後の繁栄を願う一文を入れますが、ここでよく使われるのが「ご活躍」です。また、時候の挨拶に続く慶賀の挨拶にも、たびたび登場します。
「益々」と「ご活躍」の例文/使い方
- 末筆ながら、これからの益々のご活躍をお祈り申し上げ、挨拶の言葉とさせていただきます。
- 貴殿におかれましては益々ご活躍のこととお慶び申し上げます(文頭で用いられる)。
- 今後とも益々のご活躍を陰ながら祈念しております。
「ご活躍」の前に「益々」を置き、相手が今よりも活躍することを願う気持ちを表します。
手紙やメール、文書の最後だけでなく、文頭でも「拝啓 大寒の候…」という時候の挨拶に続けて「益々ご活躍のこととお慶び申し上げます」のように一緒に使われることが少なくありません。
特に案内状などのビジネス文書では、文頭でよく使われます。なお、「ご活躍」は企業などの組織に対してではなっく、相手が個人の場合に使われることが多いです。
益々と一緒に使う敬語② ご発展
「発展」とは「物事の勢いが盛んになったり、上の段階に進む」という意味。ビジネスシーンでよく使われ、尊敬を表す接頭語の「ご」をつけて、取引先の企業や組織などの事業の発展を願うときに「ご発展」を用います。
逆に、個人に対してはあまり用いません(事業を手がける個人に対して、ビジネス上の文書を出すときは使えます)。
「ご発展」も「ご活躍」と同様、文書やメールの慶賀の挨拶や結びに使われる言葉です。では、例文で使い方を見ていきましょう。
「益々」と「ご発展」の例文/使い方
- 貴社の益々のご発展をお祈りいたしますとともに、今後とも変わらぬご愛顧を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
- 拝啓、貴社におかれましては、益々ご発展のこととお慶び申し上げます(文頭で用いられる)。
- 御社の益々のご発展を祈念して、結びの言葉とさせていただきます。
「ご活躍」と同様に、「益々」と「ご発展」を組み合わせて使い、文書やメールなどを締める文章を作ることが多いです。
また、文章の文頭、時候の挨拶に続けて「益々ご発展のこととお喜び申し上げます」「益々ご発展のことと存じます」のように、慶賀の挨拶文にも使われます。文頭、結びのいずれ場合も、企業へのビジネス文書ではよく使われる表現。
文頭と文末では「益々ご発展…」の後に続く言い回しが異なるので要注意です。平易ながら、敬語表現とともに使える表現なので、ぜひ使いこなしましょう。
益々と一緒に使う敬語③ ご清祥
「清祥」の読み方は「せいしょう」。相手が健康で幸せに暮らしている様子を喜ぶことです。この言葉は、一般的に手紙や挨拶で使われ、日常会話ではほとんど登場しません。
「ご清祥」は尊敬を表す接頭語「ご」を加え、相手の幸せを喜ぶ気持ちを強調したものです。ビジネスシーンで出す文書やメールの文頭や結びで使われますが、対象となるのは個人。
したがって、企業などの団体やそこに属する人に対しては、あまり使われません。
「益々」と「ご清祥」の例文/使い方
- 拝啓、初秋の候、〇〇様におかれましては、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます(文頭で用いられる)。
- 時下、益々ご清祥のことと大慶に存じます。
- 末筆ながら、皆さまの益々のご清祥とご多幸をお祈り申し上げます。
「益々」と「ご清祥」はセットで、個人に送る手紙・文書やメールの文頭で使われることが多い表現です。
ビジネス文書や手紙では、本題に入る前に「拝啓」などの頭語や時候の挨拶、感謝や祝福の言葉を入れます。
「益々ご清祥のこととお喜び申し上げます」は、祝福の言葉として重宝される言い回しなため、覚えておくといいでしょう。もちろん目上の人に使えます。
文書やメールを締める文章として使う場合は、「益々のご清祥をお祈り申し上げます」と文末の言い回しに注意しましょう。
益々と一緒に使う敬語④ ご健勝
「健勝」は元気ですこやかな様子を意味する言葉で、読み方は「けんしょう」。手紙や文書・メールのほかに、挨拶やスピーチでも使われます。「ご健勝」は尊敬を表す接頭語「ご」を加えたもので、相手の健康を気遣う様子を表したもの。
こちらも「ご清祥」と同様、個人に対して使う言葉であり、企業などの組織に出す文書などでは用いません。文頭、結びの両方で使いますが、明らかに病気とわかっている人には使わないほうがよいとされています。
目上の人で特に高齢の人に対して使う場合は配慮して使用するようにしましょう。
「益々」と「ご健勝」の例文/使い方
- 拝啓、初秋の候、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます(文頭で用いられる)。
- 最後になりましたが、皆様の益々のご健勝とご多幸をお祈り申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。
- 末筆ながら、〇〇様の益々のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。
「益々」「ご健勝」を文書・メールの文頭で用いるときは「益々ご健勝のこととお喜び申し上げます」、結びで用いるときは「益々のご健勝をお祈り申し上げます」のように表現することが多く、文頭と結びとで文末の言い回しが異なることに注意しましょう。
どちらも相手の健康を気遣う表現です。会合の案内や告知したい内容があるような文書では文頭で使い、そのあとに本題を記します。
お礼状やプライベートな手紙では、文末に使うことが多い傾向にあります。
【参考記事】「ご健勝」の意味とは?|ビジネスシーンで使える例文まで解説します▽
益々と一緒に使う敬語⑤ ご清栄
「清栄」とは「清く栄える」の意味で、読み方は「せいえい」。相手の無事と繁栄を喜ぶ表現です。「ご清栄」というかたちで手紙などに用いられる一方、日常会話で用いられることはほとんどありません。
個人相手よりも、企業や団体などに向けた文書で用いられるのが一般的です。例文にもあるように「ご清栄」は文書の文頭で用いられることが多く、締めに使われることは少ないようです。
「益々」と「ご清栄」の例文/使い方
- 拝啓、貴社におかれましては益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 師走の候、貴社益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
- 謹啓、貴社におかれましては益々ご清栄の趣、お喜び申し上げます。
「益々」「ご清栄」は企業などの組織に当てた文書・メールの文頭で使われることが多いです。文頭では、本題に入る前の挨拶文が入ります。
挨拶文は「拝啓」「謹啓」などの頭語と「師走の候」などの時候の挨拶、文書を送る相手企業などの事業がうまく行っている様子を喜ぶ文で構成するのがいちばん正式な形。
「益々ご清栄のこととお喜び申し上げます」は、まさに事業がうまく言っている様子を喜ぶ文章ですね。文頭の挨拶文は形式的なものですが、ビジネスパーソンとしてきちんと押さえておきたいところです。
【参考記事】「ご清栄」の意味や正しい使い方とは▽
「益々(ますます)」を使った日常会話の例文
- 午後から、雨がますます激しくなる予報です。傘を忘れないようにしましょう。
- 新しい駅ができたことで、この街がますます発展するといいですね。
- 息子さんは立派に成長されましたね。今後の活躍がますます楽しみです。
- 昨日よりも、頭痛がますますひどくなってきた。
- これからますます勉学に励み、その才能を世の中の役に立ててほしいものです。
「益々」と「増々」との違いとは
「増々」という表記を見たことはありませんか。「増々」は「益々」の慣用的な表記で、意味は同じです。もともと「益々」が「増す」という動詞が重なってできた表現なので、当然ですね。
日常の手紙などではひらがなで「ますます」と使いますが、ビジネスシーンで作成する文書やメールでは「益々」を用いることがほとんど。「増々」を使うことはほとんどありません。
「増々」と「益々」で迷ったら、ビジネスシーンでは「益々」を使うことをおすすめします。
「益々」と言い換えできる類語一覧
益々の類語① より一層
「より一層」とは「もっと、さらに」という意味。「より」と「一層」はどちらも「益々」の類語で「さらに」という意味があり、二つを重ねることでその度合いを強調した表現になっています。
「益々」の類語ですが使えるシーンが広く、ふだんの話し言葉から改まったスピーチまでさまざまなシーンで使えます。文書で使うと、かしこまった表現ながら柔らかい印象を与える効果も。
また、「より一層のご活躍をお祈りしています」と相手のことを言うだけでなく、「より一層の努力をします」と自身のことを語るときにも有効です。
「より一層」の使い方
- より一層、皆様からの温かいご支援をお願い申し上げます。
- 私は今後もより一層、努力を続けてまいる所存でございます。
- 頂いたご意見を真摯に受け止め、弊社ではより一層のサービス向上に取り組んでまいります。
益々の類語② 更なる
「更なる」は「一層の、ますますの」といった意味。「より一層」と意味が同じため、基本的な使い方は同じです。
「文語」とよばれる古い日本語をもとにした書き言葉の「更(さら)」から派生した表現ということもあり、「更なる発展」「更なる努力」のように使うと、堅苦しい印象を与えるかもしれません。
相手のこと、自分のことを問わず使えますが、例文で示したように、ビジネスシーンでは転勤の挨拶状やお礼状を会社関係の人に出したり、スピーチなどで使うと効果的です。
「更なる」の使い方
- このたび、部長職を拝命いたしました。これを機に、更なる努力を重ねていく所存であります。
- 御社の更なるご発展を心よりお祈り申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。
- 今後は、制度運用の更なる見直しを行う必要があります。
益々の類語③ 一段と
「一段と」には、他と比べて明確に違いがある様子を表す表現です。「益々」と同様、程度が大きくなる状況を表していますが、「一段と」のほうが状況が変化している様子をより強調しています。
「今日は一段と美しい」のように、相手を褒めたいときに使うといいでしょう。例文にあるように、「一段とすばらしい」のようにポジティブな表現にも、「一段と寒さが厳しい」のようにネガティブな表現にも使えます。
また、ビジネス文書の文頭の挨拶にもおすすめ。敬語とともに使ってもOKな言い回しです。
「一段と」の使い方
- あれから1年経ち、彼は一段と腕を上げた。
- 寒さも一段と厳しくなってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
- 社員一同、一段とサービスの向上に努めてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
益々の類語④ 尚のこと
「尚のこと」は「尚」を強調する表現。
「なおさら、より一層」の意味がありますが、「景色が良いところで食べるのなら尚のこと、食事は楽しい」のように、すでにそうである状態にさらに条件が加わって、その傾向が今よりも強まる様子を表現したいときに使います。
その点では、程度が大きいことを表す「益々」とは少しニュアンスが異なりますね。形式が決まっているビジネス文書ではあまり使う機会がありませんが、例文のように少し硬めの文章を書くときに使うと、文章が締まります。
「尚のこと」の使い方
- 業界をけん引する企業なら尚のこと、厳しい法令遵守が求められる。
- そんなに興味があるのなら尚のこと、あなたがその会議に出席するべきです。
- 寒い日は外に出るのがおっくうなのに、風邪を引いていたら尚のことつらいだろう。
益々の類語⑤ 以前にも増して
「以前にも増して」は、過去と比べて程度が大きくなっている様子を表します「益々」よりも、前の時間と今の時間の違いを強調するニュアンスが強い表現です。
「以前にも増してよく働く」のように良い意味でも、「以前にも増して交通渋滞がひどくなった」のように悪い意味でも使用可能。
こちらも形式的なビジネス文書ではあまり登場しない表現ですが、報告書などの社内文書を書くときにはぜひ知っておくと便利。使用することで、文章全体がかっちりとした印象になります。
「以前にも増して」の使い方
- 彼は以前にも増してよく働くようになった。
- 流行の移り変わりが激しい昨今、以前にも増してお客様のニーズに対してきめ細やかな対応が求められている。
- 駅前の再開発が行われ、以前にも増して人の行き来が激しくなっている。
「益々」と伝えられる英語表現
- more and more(ますます多くのもの、ますます多くの~)
- 形容詞- 副詞の比較級、またはmore+形容詞- 副詞(さらに~、より一層~)
- still more(なおさら、一層)
- much more(さらに多くの~)
- all the more(ますます)
- even more(一層、さらに)
日本語の「益々」やその類語表現に当たる英語表現の中で、いちばん基本的なものは比較級を使った表現。
「さらに速い」のように形容詞の程度を高める場合は、「速い」を意味する「fast」の比較級「faster」を用いればOK。比較級がない形容詞や形容動詞は、「more +形容詞・形容動詞」で表します。
また、「ますます多くの人が集まり始めた」のように数の程度を表現するときは「more and more」を使い、「more and more people began to gather.」のように表せます。
「益々」の意味や使い方をきちんとマスターしましょう!
今回は「益々」を使った敬語表現や、「益々」とよく似た類語表現を取り上げました。
ビジネスシーンの中でも、特に文書を作るときによく使われる表現ということを理解していただけたと思います。「益々」とともに使われる言葉には、個人に向けて使うものと企業などの組織に向けて使うものがあり、慣れるまでは煩わしいかもしれません。
読み方が難しいものもあります。実際に文書作成を通して、こうした表現に慣れていきましょう。
【参考記事】「ご自愛ください」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!▽
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