謙譲語"差し上げる"の意味/使い方。類語&例文付き|ビジネス敬語ガイド
「差し上げる」の意味とは?
「差し上げる」とは、「与える」「やる」の意味を持つ謙譲語表現になります。謙譲語とは、自分をへりくだって、相手を立てるために使われます。
自分の動作について使う敬語で、相手の動作につかうと失礼にあたるので注意が必要です。
相手に対し「お花を差し上げましたか」のような例文では、自分より相手を見下すような言い方になってしまいます。これはとても失礼なことで、相手が目上の場合は要注意。
「お花を差し上げたいと思います」のように自分の動作に使うのが正しい使い方で、相手に対して自分を一段下げた立場に置きます。
「差し上げる」の使い方|使う上での注意点
使い方① 相手の動作には使わない
「差し上げる」は自分を相手よりへりくだった立場に置く言い方なので謙譲語です。
間違えやすいのは相手の動作ではなく、自分の動作に使うということ。これを間違って相手の動作に使うと高飛車な態度になって非常に失礼にあたります。例えば「手紙を差し上げる」という例文で見てみましょう。
相手の動作に使うと「手紙を差し上げてください」のような言い方になり、自分の方が一段上の立場になってしまうのです。自分の動作に使うと「手紙を差し上げます」となって、自分を一段下げた言い方になります。このように自分の動作に使うのが「差し上げる」の正しい作法です。
使い方② 上から目線に見えないよう注意する
ビジネスシーンで「差し上げる」という言葉の意味を知らないで使うと、相手に礼を欠いて失礼になることがあります。
「与える」という意味の謙譲語なので、相手に恩恵を与えるつもりで使うのがポイントです。例えば「教えて差し上げる」という言い方をすると、相手に「教えてやる」という上から目線の意味合いになりますね。
いかにも自分の方が目上の立場になるので、相手に不快感を与えてしまいます。また、文末に使うとより自分の立場を強調してしまうので要注意。よくわからない場合は「お教えいたします」のように言い換えた方が安全です。
使い方③ 疑問文にして柔らかくするのがベスト
ビジネスシーンでも「差し上げる」を間違って使うケースはかなりあります。それは「してやる」という意味が含まれるからで、いかにも偉そうな感じがしてしまうわけです。
「差し上げる」の上手な使用法として、疑問文にするというやり方を憶えておくと便利ですよ。例えば「お手紙を差し上げます」よりも「差し上げましょうか」のような疑問文にすると、とてもソフトな言い回しになって相手を敬う感じが出せます。
「差し上げる」を使いたい場合は、なるべく疑問文にして使うことを知っておいてください。
「差し上げる」を使った例文
- 今回の展覧会はご案内を差し上げるまで、お待ちください。
- ご挨拶代わりに差し上げる名刺ですので、今後ともよろしくお願いいたします。
- 結果が分かり次第、ご報告を差し上げることになっています。
- 改めてお電話差し上げるまで、そちらで待機していただけませんか。
- こちらからご連絡差し上げるのが筋でございますので、どうかご容赦くださいませ。
- 差し上げるメールで確認していただければ幸いです。
- 先着50名様に特製のカレンダーを差し上げる。
- 伺ったおりには何でもして差し上げるのが好意に報いることだと思います。
名刺を渡す時には「お渡しする」よりも、「差し上げる」の方がより丁寧で相手を敬う印象をつくれます。
「ご案内差し上げる」というのはあまり使わないので、「ご案内を差し上げる」という例文の方が自然です。お電話、ご連絡、メールは差し上げるをつければ、謙譲語として使えますね。
自分から行動することなので、へりくだった言い方がふさわしいです。カレンダーの例文は、会社や商店などが顧客に対して一般的に使う差し上げるになります。して差し上げるは「してあげる」の意味で使います。
【「例文」で使われている敬語】
・「よろしくお願いいたします」の使い方をより分かりやすく解説します
・「幸いです」は目上には使えない?より丁寧な言い換え方もご紹介します
「差し上げる」と言い換えできる敬語表現とは
「差し上げる」には、やや上から目線の印象を受ける人も少なくありません。そのため、言い換えできる敬語を覚えておくと、ビジネスメールや打ち合わせでの亀裂を避けられますよ。
ここでは、「差し上げる」の言い換えできる敬語として4つご紹介します。
- 差し上げます
- 〜させていただきます
- 〜いたします
- 〜申し上げます
各敬語の意味、使い方についてしっかりと確認していきましょう。
「差し上げます」の使い方とは
「差し上げます」は「差し上げる」よりも丁寧な敬語になります。
どちらも「差す」と「上げる」の2つの言葉から成り立っており、「上げる」は目下の者が目上の者に行動を起こす時に使います。
どちらも自分を下にへりくだった謙譲語ですが、「差し上げます」は「ます」を使うことでより相手を敬う意味になります。特にビジネスシーンでは「差し上げる」よりも「差し上げます」に言い換えた方がふさわしい使い方になります。
「差し上げます」の例文
- 昨日までに予約してくださった方には、明日の午前に改めてお電話を差し上げます。
- 次回の展覧会には招待状を差し上げますので、ぜひお越しください。
- 何も気をつかわないでくださいね。こちらがすべてして差し上げますから。
「〜させていただきます」の使い方とは
「させていただきます」は「させていただく」の丁寧な言い方です。「させていただく」というのは「させてもらう」の謙譲語で、相手に許可してもらってから何事かを行う時に使います。
「させていただきます」は目上の者に使うことができます。「差し上げる」も同じ謙譲語で目上の者に対して使いますが、どちらも自分の行動について使用します。
「させていただきます」には相手の許可を求める意味合いが含まれていることですね。自分の行いを言葉の前につけるのが正しい使い方です。
「〜させていただきます」の例文
- 午後から急に予定が入りましたので、ここで早退させていただきます。
- 前の方が辞退されましたので、補欠の一番の方を繰り上げ合格とさせていただきます。
- 今回のプロジェクトは比較的慣れておりますので、私が担当させていただきます。
「〜いたします」の使い方とは
「いたします」も「差し上げる」と同じく謙譲語になります。
相手への敬意が込められているので目上の相手にも使えますね。似た言葉づかいに「します」があります。これは敬語ですが相手への敬いがなく、へりくだった言い方ではないので丁寧語です。
「差し上げる」は自ら率先して行動する時に使いますが、「いたします」も同じようなタイミングで使えます。特に確認、連絡、失礼などの言葉を前につけることが多く、ビジネスシーンではよく使われます。
「〜いたします」の例文
- 今の時期はお忙しいとは思いますが、緊急の案件ですので先にご連絡いたします。
- お客様からいただきましたご意見は、当社のスタッフが必ずチェックいたします。
- 会議中ではありますが、クライアント様との約束がありますので失礼いたします。
「〜申し上げます」の使い方とは
「申し上げます」は「言う」の謙譲語になります。
「上げる」という言葉を含んでいるので、明らかに目上の相手に対して使う言葉です。さらに「ます」という丁寧語がつくので、より相手を敬う意味合いを出せます。
「差し上げる」には自分が目上の相手に「してあげる」という使い方をしますが、同じように「申し上げます」にも「して差し上げる」という意味もあります。
「お礼を申し上げます」などの例文は「お礼をさせていただきます」という意味にもなります。「申し上げます」の前には喜び、感謝、依頼などの意味を含む言葉が多く使用されます。
「〜申し上げます。」の例文
- このたびは大切な資料を拝見することができ、厚くお礼申し上げます。
- 今後も全社一丸となって期待にそえるように頑張りますので、ご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。
- 失礼とは思いますが、急ぎの案件でしたのでメールでお知らせ申し上げます。
【「例文」で使われている敬語】
・「お願い申し上げます」は連続で使わない!目上に使える例文まで解説します
「差し上げる」の類語一覧
「差し上げる」には、「与える」「やる」の意味があり、別の言い換えできる類語が存在します。
- 贈呈する
- 進呈する
- 献呈する
- 付与する
- 寄贈する
各類語と「差し上げる」との違いまでしっかりと確認していきましょう。
差し上げるの類語① 贈呈する
「差し上げる」の類語はいくつかありますが、「与える」という意味でよく使われる敬語が、「贈呈する」。
基本的な意味は、相手に物を贈ること。その点では「差し上げる」と共通しています。両者の大きな違いとしては「差し上げる」が話し言葉としても使われるのに対し、「贈呈する」というのは話し言葉ではあまり使われません。
主に公式な場で物を贈る時に使われる改まった言葉で、例文としては「花束を贈呈する」「感謝状を贈呈する」などのように用いられます。
差し上げるの類語② 進呈する
「進呈する」も「差し上げる」の類語ですが、「与える」や「やる」といった意味を丁寧に表す言葉です。
「贈呈する」よりも軽い使い方になります。相手に対して物を贈るという意味合いでは共通していますが、「贈呈する」が公式の場で使われるのに対し、「進呈する」は個人的な関係で使われますね。
また、個人間の会話でも使われることがあり、「僕のゴルフクラブを君に進呈するよ」などのように親しい間柄の会話でも使用可能。目上から目下にも使われますが、上から目線のような感じはありません。
贈る相手によっては「差し上げる」と言い換えた方がよいこともあります。
差し上げるの類語③ 献呈する
「献呈する」という言葉は「差し上げる」と同じく謙譲語です。自分がへりくだって相手を敬う態度を示すことができます。
「贈呈する」や「進呈する」と違うのは、本や作曲した曲などを相手に与える時などに使われることでしょう。「献」という言葉には相手を「奉る」という意味があり、「呈」には与えるという意味があります。
「差し上げる」は会話でも使われますが、「献呈する」は話し言葉では使いません。書籍や楽譜などが贈られるときに「献呈」という言葉が添えられます。
差し上げるの類語④ 付与する
「差し上げる」の類語の中では最も形式的なのが「付与する」という言葉でしょう。
文字どおり付け加えて与えるという意味で、公的な文書通達などによく使われます。「やる」や「与える」という意味では「差し上げる」と共通していますが、会話では使われません。
ビジネスシーンなどでも相手への敬語的な使い方ではなく、一方的に目上から目下へ与える場合にふさわしい上から目線の言葉ですね。「権限を付与する」などの例文に特徴がよく表れています。
差し上げるの類語⑤ 寄贈する
「寄贈する」も「差し上げる」の類語で、「与える」という意味があります。大きな違いは会話では使われないので、「差し上げる」に言い換えるのがおすすめです。
「寄贈する」というのは個人間の贈り物ではなく、公共性の高い場面で使われる言葉です。例えば「学校へ記念品を寄贈する」とか、「病院へ移動用の車を寄贈する」などの使い方をします。
気をつけたいのは「贈呈する」との使い分け。「寄贈する」は学校や病院など公共施設に与え、「贈呈する」は人に対してあげるときに使用します。
「差し上げる」の英語表現
- to give (差し上げる)
- to present something to you(あなたに差し上げます)
- t0 receive a phone(お電話を差し上げる)
- let me help you to some more(もっと差し上げましょう)
- to raise an offering(差し上げる)
- i'll give it to you(差し上げます)
「差し上げる」を英語で気軽に使えるのが、「to give」と「to present」でしょう。日本語のようにへりくだった謙譲語ではありませんが、日常会話では十分です。
もう少し丁寧な言い方では「to raise an offering」が適しています。自分より目上の人に対して使う丁寧な言い方です。電話を差し上げる場合は「to receive a phone」が一般的ですね。
「差し上げる」の使い方をこの機会にマスターしましょう!
「差し上げる」という言葉はよく使われますが、間違った使われ方をすることが多いです。上から目線で使うと失礼になるので注意が必要です。
基本は相手を敬って、自分からへりくだって行動を起こすときに使うと覚えておいてください。「上げる」という言葉は下から上にあげるという意味があります。ご紹介した類語などと一緒に参考にしてくださいね。
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