億万長者から借金男に転落。億単位の借金を背負った時、人は何を思うのか?
21歳の億万長者が、3億の借金を背負うまで
──20歳で銀座のクラブに行きだして、社長令嬢とお見合いをして、第2話ではだいぶ華やかな金持ち豪遊エピソードを聞かせていただきました。ここからが今連載の真骨頂(笑)、3億もの借金を背負われた経緯と、その後の生活をお聞かせください!
もうね、今となっては本当に贅沢していたなと、話しながら猛省しました(笑)そして、仰る通りここからが僕の転落人生のお話です。これがもうジェットコースターみたいに一気に落ちていくんですよね(笑)自分でも信じられないくらい(笑)
方向性の違いで狂いだした歯車 〜幹部陣との対立〜
──預金残高5億の人が、億単位の借金を背負う。とてもじゃないけど何が起きたのか想像できません(笑)借金を背負うまでの経緯を教えていただけますか?
順を追って説明すると、2015年の夏、地方の拠点であった大阪と博多が波に乗ってきたタイミングで、一気に東京以外を伸ばそうと思い、創業時から仲間だった後輩の安岡倫哉(仮名:以下「安岡」)を派遣しまして。その際に、より頑張ってくれることを期待して株式譲渡を行ったんです。
──株式ですか。何%を譲渡されたんですか?
25%です、経営権の問題など株について何も深くは考えずに、4分の1もの株式を手放しました(笑)第1話の中で出てきた税理士の夏井さんに25%、営業部長の藤川さんにも25%の株式を譲渡していたので、これで株を僕を入れた四人で均等に四分割している状態になりました。
──持株比率が4分の1ですか!嫌な予感がします(笑)
たぶんその嫌な予感は当たっています(笑)それから数ヶ月経ったあたりに、某大手脱毛エステサロンさんで問題が起きまして、社会的にもちょっとした話題になりました。そして、あろうことか当時溺愛していた彼女が、新卒でその会社に入社してしまったんですね。問題が起きたのは、ちょうど入社数ヶ月とかのタイミングで研修を頑張っている時期でした。これは彼女のためにも、その大手エステサロンを守らければならないと思いまして、彼女にいい顔したかったんです。買収を試みました。もちろん僕以外の3人の株主に大反対されて(笑)たぶんそのあたりから、朝比奈は何を考えているんだって、溜まっていた僕への不平不満が社内で表面化しはじめました。
──表面化ということは、もともと社内から不平不満は上がっていたんですか?会社は順調でしたよね?
方向性の違いから、何度か対立してしまっていたんです。というのも、幸い売上も利益も順調に上がってきていたので、税理士の夏井さんと後輩の安岡を中心に何人かの社員が、上場したい!と言ってきていて、最終的に僕が拒否していたんですよ。それでも「上場に向けて頑張ってもいいよね」という文化は根強くあって、そこら辺の不満が眠っている状態で、僕が脱毛エステサロンを買収すると言い出して、結果的に火に油を注ぐ形になってしまいました。
──上場に反対されたのは、何か理由があったのですか?
特に上場するメリットがうちになかったからです。借り入れをする必要はないし、名前を売る必要もなかった。まだまだ4年目の会社だったので、それだったらもっと会員さんにできることがあると考えていました。
創業社長に残された、3億の借金
──結局、大手脱毛エステサロンさんは買収するに至ったのですか?
それなんです。買収はかなり現実的な金額だったので、反対されながらもしつこく説得し続けました。したら、緊急役員会議が開かれることになりまして。
──おっ、ということは。
そう、買収を本格的に議論して決定する会議だと思って、脳天気にもワクワクして役員会に参加したら、開始早々に「代表取締役の朝比奈恒介氏、解任の決議を取ります」と言われて。えっ、まじか!とそれはもう焦りましたね。すぐに決議がはじまり、夏井さんと藤川さんはもちろん、かわいがっていた安岡も解任に賛成して、これで過半数。これが2015年11月頭くらいの出来事です。
──えっ、てことはクビですか?
はい、ここで会社をクビになりました(笑)正直驚きましたね。ただ、会社はいずれ安岡に譲る予定でしたし、会社が大きくなったのは夏井さんと藤川さんのお力があったからこそだったので、不思議と怒りはなかったです。
──クビになり、借金まで背負ったんですか?
スポンサーの違約金などが重なりました。代表である僕の解任によって、億単位の違約金が生じることは分かっていました。解任が決まり、違約金の話になったとき、カッコつけた勢いで「違約金は自分が払います」と言ってしまったんです(笑)その場で契約書を書き、僕が支払うことが決まりました。そして最終的に蓋を開けてみたら、違約金だけでなく、不動産の払い込み、個人の税金と他にも多額の支払いが積み重なり、請求金額は軽く8億を超えてしまいました。預金の5億を全部使っても、3億足りなかったんです。
「自殺を考えた」借金を背負ったときの心境
──3億の借金、正直想像できません。そのときの心境を教えていただけますか?
いやー、素直にやばいなって感じでした(笑)ただ、最初はあんまり実感がわかなくて、あれだけ豊かな生活をしていたし、まあ2年とか3年で返せるかなと高をくくっていましたね(笑)自分がクビになったこと、そして借金を背負ったことを痛感しはじめたのはそれから数日経った後です。実際に仕事がなくなり、使っていたクレジットカードが止まり、収入がなくなり、少しずつ現実を突きつけられました。
──お金持ちだった世界から借金を背負った世界に、少しずつ現実が移り変わっていったのですね。
そうです。次第に人と会う予定もなくなりました。一日中パンツすら履かずに家の中で俯いている、そんな引きこもりの毎日がはじまりました。一人で抱え込んでいると人間追い込まれるもので、脳裏に「自殺」の二文字がよく浮かぶようになりました。暗い部屋で途方に暮れていると、ふとした瞬間に借金という現実が現れて、その現実に向き合う恐怖から逃げたくなってしまうんです。もうこの世界にいたくないなって。
──「自殺」ですか。
うん。いつの間にか自殺掲示板を見たり、自殺の仕方を調べたりしている自分がいました。首吊り、服毒・・・どれが一番楽に死ねるかなとか考えていました。ヒ素とかって実はネットで買えて、しかも安いんです。ヒ素を使った自殺を殺人に見せる死に方を調べて、自分の生命保険金で借金をなんとかしようかなとかも考えていました。
──大きな結果を出された方でも、追い込まれるとそこまで考えてしまうんですね。
現実とちゃんと向き合っている冷静な自分もいて、死のうとしている自分を客観的には見ているんです。それでも自制できない。人間て弱いなーと思いましたね。電車に飛び込む人っているじゃないですか。人身事故とか起きるやつ。たぶん飛び込んでしまう人って、最終的には何も考えずに、というか考えられずに、吸い込まれるようにポーンと飛び込んでしまうんだと思います。僕も駅のホームで何度も飛び込むことを考えました。
いつもと変わらない親友の存在で、心が救われた
──そのような追い込まれた状況から、どうやって立て直されたんですか?自殺せずに踏みとどまった心境の変化なども教えてください。
僕は幸運にも早い段階で2人の親友に会うことができて、その2人にクビになったこと、そして3億の借金を背負ったことを伝えられました。彼らに会えたことで、かなり気持ちが楽になりましたね。
──やはり親友の存在は大きい、と。どのような間柄なんですか?
心の底から親友は大切だと思いました。大学時代からの友人で、仕事を一緒にやることはなかったですが、プライベートから仕事のことまでいつも相談に乗ってくれていた2人です。今でも暇があれば飲みに行き、よく一緒に旅行へ行っています。肩書きがついてお金を持つと、僕の顔色を気にしているからか、周りのみんなが僕に何かを指摘してくれる機会が大幅に減ったんですが、この2人だけは肩書きもお金も関係なく、常にフラットに接してくれて、僕が道をはずしそうになったときはめちゃめちゃ叱ってくれました。
──朝比奈さんの起業する前もした後もご存知の貴重な親友さんなんですね。どんなお叱りを受けるんですか?(笑)
例えばですけど、僕って好きな女性に対してひどく貢いでしまう癖があるんです。さっきの脱毛エステサロン買収騒動みたいな(笑)だから「誰が一番早くに結婚するか」みたいな話になったとき「お前は貢ぐから無理だ」と言われましたし、それこそ買収の話を相談したときも「いくらなんでも自分勝手すぎる社長だろ。バカじゃないの?嫌われるよ」とこっぴどく怒られました(笑)答えのないことを夜通し議論したこともありますし、下らないことから真面目なことまでとにかく色々と話す中で、2人が「違うでしょ」と思ったことはストレートに指摘してくれましたね。
──社長解任や借金の話を伝えたときの2人の反応は?
もともと「そんな勝手やったらクビになるよ」とか忠告してくれていたので、実際に解任になり借金を背負ったと伝えたら、「お前やっぱバカだねー(笑)」と笑ってくれました。渋谷のワインバルで3人で飲んでいたんですけど、ニートになった後でもいつもと変わらず接してくれて、素直に嬉しかったですね。
もう一つの支えは、師匠
──親友以外に心の支えになったのは?
師匠の存在ですね。ある有名な企業を創業された一族の方で、現在は上場企業の会長職をされてます。すべてを支えていただきました。
──有名企業の創業一族で上場企業の現会長・・・普段なかなか出会えない方ですよね?
出会えない方だと思います。僕の場合は妙な出会いでして、元カノのお父さんだったんです(笑)腕時計が好きな方で、僕が詳しかったので一緒に選びに行ったりしていて、「その時計、センスないから!」とか生意気なアドバイスまでしていました(笑)そうこうしている内に、いつの間にか親しい距離感になっていたんです。
──元カノのお父さん、かなりプライベートなご縁ですね。というか、その関係値で仲良くなれるんですね・・・“元”カノですよね?(笑)
そうなんです、師匠からしたら娘の“元”彼氏です(笑)一緒に時計を選んだり、赤提灯の汚い飲み屋さんに行ったり、一緒にクラブに行ったり、もう友達に近い間柄でした。普段も「師匠」ではなく「おっさん」と呼んでいましたし(笑)
──おっさん!?!?(笑)フランクすぎません?(笑)
やっぱりそう思いますよね(笑)師匠の仕事関係者からもかなり驚かれていました。創業一族で上場企業の会長、誰もがペコペコする立場の方ですから、「おっさん」はさすがに皆さん衝撃的だったようで(笑)ただ、いい意味で気を遣わずにズカズカと踏み込んで接していたので、娘さんと別れた後も家族ぐるみで仲良くしてくださっているのかなとは思っています。
──仕事ではなくプライベートで出会い、プライベートで仲良くなったこと、そしてそこに利害関係も上下関係もない、だから良好な関係を築けたのかもしれませんね。
まさにそれだと思います。何度か「やっぱり、娘と結婚してくれないか?」と言ってくださったのに、ことごとく断っていました(笑)それでも僕を息子のように面倒を見てくれました。
──そんな師匠がもう一つの支えになったと。
そうですね。師匠にはクビになった日、その事実をすぐに報告しました。忙しい方なので、しばらく音沙汰がなかったんですが、3週間くらいして迎えの車を僕の家につけてくれました。親友の助けで気持ちが一時的に前向きになったものの、返済時期が近づいても返済の目処が全く立たず、やはり生命保険金しかないかなと追い込まれていたタイミングでした。
──どこに連れて行っていただいたんですか?そしてその先は何を?
師匠の自宅です。躊躇う僕を、半ば引きずるように連れて行ってくれました。自宅に着くとおばさん(編集部注:ベテラン家政婦)がご飯を作ってくれていて、師匠の家族みんなと僕の大好きな唐揚げ定食を食べました。唐揚げなんか絶対に食べないような家庭なんで、みんなの気遣いへの感謝や他にも様々な感情が相まって、泣きながら唐揚げ定食をいただきました。あの唐揚げの味は今でも忘れられないです。食べ終わった後に師匠の部屋に行き、2人きりで話しました。
その場で出てきた、アタッシュケースの中身とは
──師匠の部屋で解任や借金の会話をされたんですね。
はい。あのときの会話は今でも鮮明に覚えてます。師匠の部屋に着いても僕は俯いたままで、そんな張り詰めた雰囲気の中、師匠が落ち着いた様子で「死ぬのか?いい死に方、知ってるぞ。」と。少し間をあけて僕は「はい。」と答えましたね。
──したら、師匠は何と?
沈黙が流れた後、「今死ぬか、その死ぬつもりの時間を俺に使うか、どちらかにしろ。どっちがいい?」と聞かれたので、僕は「生きられるなら」と回答しました。そうしたら師匠が「わかった。お前の困ってる金はいくらだ?」と。静まりかえった雰囲気の中で、僕が俯きながら「3億です。返せる見込みはありません。」と伝えました。すると、師匠は何も言わずに秘書に合図を出しました。そして、しばらくすると秘書が部屋の奥からアタッシュケースを3つ運び入れてきれ、師匠が「これで、3億だ。」と。現金3億を用意してくれたのです。
──現金3億!?貸してくださったんですか!?
さすがに、朝比奈お前なに言ってんだって話ですよね・・・ただ、これがすべて本当の話でして(笑)その場で現金3億をお借りすることになりました。もちろん「借りても返せません」と断ったのですが、師匠は「金がなければ、態度と時間で返せ」と言ってくださり、その足で一緒に返済に向かわせていただきました。別れ際、師匠に「お前、いい人生だな」と笑われたことが印象的でした。
──現金3億を・・・失礼を承知の質問ですが、血縁でもない朝比奈さんに なぜそこまで?
明確な理由は濁されましたが、「お前は、娘が見合い以外で初めて付き合った男なんだ。あいつを笑わせることができるのはお前だけだった。俺はお前にお金を貸すことくらいしかできないからな。」と言ってくださいました。あと、もう一つ。これは言われた訳ではなく、あくまで個人的な予想ですが、師匠との3年近い付き合いの中で利害関係が生まれたのはこのときが初めてでした。本当に友達のような関係だったからこそ、信頼してくださったのではないかと思っています。
──借金を立て替えていただいたとき、どう思われましたか?
本当にありがたい気持ちでいっぱいでした。と同時に、情けない気持ちにもなりました。会社が上手くいっていたときは、ロールスロイスを師匠の家につけて「おっさん!遊びに行こう」と調子に乗っていました。その都度「お前の会社は潰れるぞ」と師匠には言われていて、そんな記憶がふと脳裏に浮かんできました。恥ずかしいし、自分を改めようと強く思いましたね。
──もし師匠にお金を借りなかったら、どう返済していたと思いますか?
正直借金は返せていないと思います。自己破産する発想もなかったので、師匠にお金を貸していただかなければ自殺をしていたかもしれない。師匠が僕にお金を貸すメリットなんて何もないじゃないですか。一生足を向けて寝られないですね。
──まさに命の恩人ですね。第4話ではこの後、師匠にお金を返済していく道のりをお聞かせください。まだまだ大変なことが続いたとか(笑)
いやー、この後も嫌なことが立て続けに起きまして(笑)借金を背負うとこんな二次災害が起きるんだ、ってもう驚きましたよ。次回もよろしくお願いします。
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