“事なかれ主義”の意味とは?陥るデメリット/職場の空気を改善する5つの方法
事なかれ主義(ことなかれしゅぎ)とは?どんな意味で使われるの?
事なかれ主義とは、仕事や組織で波風が立たないよう平穏さを優先し対応することを意味します。
言い争いや改革を避けたい平和主義者で、自分の意見や思いを隠す傾向が…。
一見すると揉め事を起こさず周囲に配慮できているように見えますが、問題があるのに放置する姿勢は無責任だとも言えるでしょう。
また、事なかれ主義には「言い争いが面倒だから黙ろう」「言っても無駄だから言わない」など、自分の意見を言わない消極的な一面もありますよ。
事なかれ主義の類語や対義語は?
事なかれ主義の言い換えや対義語には、下記のようなものがあります。
『類語』
- 大企業病:日本の大企業に多い非効率な組織体制や風土のこと
- 縦割り主義(セクショナリズム):組織間の独立性が高く互いの組織で協力し合う仕組みが希薄なこと
『対義語』
- 瑣末(さまつ)主義:些細なことでも大袈裟に騒ぎ立てること
- 進取果敢:決断力があり自ら進んで物事を行う様子
事なかれ主義になる人の5つの心理|どんな理由でなってしまうの?
「事なかれ主義になる人のはどうして?」
「どのような心理で事なかれ主義になるの?」
事なかれ主義になる人には、どのような共通点があるのか気になりますよね。
ここでは、事なかれ主義になる人の心理をまとめて解説していきます。自分や周囲の人に当てはまる部分がないか、チェックしてみてください。
心理1. 人と争いたくない
「自分と考え方が違う」「自分は悪くない」と感じていても、自分の意見を主張することで面倒なことを起こしたくない気持ちが強いです。
例えば「その意見は違います」と発言した場合、相手と対立することになり討論や話し合いが必要となるでしょう。
この流れが面倒だと感じるので、相手の意見を受け入れて何事もなかったようにその場を終えたいのが事なかれ主義の心理です。
心理2. リスクを追いたくない
事なかれ主義の人は平穏や平和主義を重視するため、リスクを避ける傾向があります。
予期せぬ事態が発生すると、見て見ぬふりをして何事もなかったかのように過ごすことが。
トラブルに関わると自分へのリスクが増えるため、関わないようにします。
心理3. 自分に自信がない
自分の意見や行動に自信がないと「どうしたらいいのか分からない」「何が悪いか分からない」と感じます。
自分には対応できないと考え、消極的な対応を取ることが。目の前に問題があっても他力本願となり、自己主張を避けるようになります。
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心理4. 当事者意識が薄い
事なかれ主義の人は、目立つことや責任を負うポジションを嫌います。自分にしっかりとした考えや軸がないため、意見を求められても回答できないためです。
その場の雰囲気や周囲の考えに合わせて行動するため発言や行動に一貫性がなく、仕事や問題への当事者意識が低いです。
心理5. そもそも向上心がない
現状に満足しており、これ以上成長したいと考えない事なかれ主義。新しいことに挑戦するほうがリスクだと考えるので、現状維持を望みます。
出世やキャリアアップも年頭になく「このままの状態が続けばいいな」と考えているのが、事なかれ主義の心理です。
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事なかれ主義になりやすい人や組織の特徴とは?具体的なパターンを紹介
「事なかれ主義の組織にはどのような特徴があるの?」
「事なかれ主義にはどのようなケースがあるのか知りたい」
自分の周りに事なかれ主義の人がいるかや、そんな組織があるのかは、気になるところですよね。
ここからは、事なかれ主義になりやすい人や組織の特徴をご紹介します。事なかれ主義にならないためにも、どのような共通点があるのか参考にしてみてください。
特徴1. 現状維持で満足していて、出世を考えていない
事なかれ主義の人は、リスクを背負ってまで現状を変えることを望みません。
例えば
- 年収アップのために役職者になれる勉強をする
- 新たな挑戦のために転勤をする
など出世やキャリアアップとは無縁。いかに楽で無理なく過ごせるかに重点を置くので、何年経っても同じポジションにいます。
事なかれ主義を脱却するなら、常に向上心を持ち新たなことにチャレンジをする気持ちを忘れないことが大切です。
特徴2. 年功序列など、成果を評価されにくい環境
日本の企業には、年功序列や大企業病など昔から変わらない風土が残っている場合があります。
特に年功序列の場合は上司よりも優秀な成績を納めても適切な評価がされず、年齢が高いことが年収や出世につながることに。
その結果「努力をしても意味がない」「適切な評価は望めない」と感じるようになり、目の前の仕事を適当に行ったほうが良いとの決断に至ります。
せっかくやる気があっても組織が事なかれ主義では成長ができないので、転職を考えるのも一つの方法です。
特徴3. 争い事が嫌いなので、どこにでもいい顔をする
相手の主張が間違っていても、反論をした後のことを考えると面倒だなと感じるのは事なかれ主義の特徴。
険悪なムードや言い争いになることが嫌なので、その場を穏便に済ませようとします。
- 自分は悪くないと思っていても意見を言わない
- 相手の顔色を見ながら意見を合わせていく
というのは、事なかれ主義ならでは。
確かにその場では波風は立ちませんが周囲から「無責任な人」と感じられている可能性があるので、自分の意見を主張することは大切です。
特徴4. 部下の功績は、全て上司のものとして評価されている
組織によっては、チームや部署の成績はリーダーのみに反映されることがあります。
例えば、営業チームで部下が多くの受注を獲得しても評価されるのは上司だけ。
部下のやる気がなくなり「どうせ頑張っても意味がないし」「自分は評価されないし」と考えるようになり、事なかれ主義に陥ってしまいます。
この場合は組織として成長するためにも、事なかれ主義にならないよう評価方法を見直す必要があるでしょう。
特徴5. 責任を負うのが嫌だから、自分から提案をしたくない
事なかれ主義は「自分で責任を取りたくない」「現状のままでいいから面倒なことは避けたい」と考えるため、周囲の意見に同調する傾向があります。自分から発言したり反論したりすると、その内容に責任を持つ必要があるので
- 極力意見を言わない
- 自分から提案や考えを述べずに周囲に合わせる
という行動をとります。
いつも周囲に合わせていると「無責任」「うざい」と見えるため、最低限は自分の意思を持つ必要があるでしょう。
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特徴6. ミスをした時に誰もフォローしてくれなかった
事なかれ主義の人は、過去の失敗がトラウマになり自主的な行動や発言を避けている場合があります。
- 過去に自分の思いを発言した時に批判を浴びて嫌な思いをした
- ミスをした時に酷く怒られてミスが怖くなった
などの深い傷を抱えていることが。ネガティブな経験から「怒られたくない」「傷つきたくない」という思いが強く、自分を守るために事なかれ主義に陥っています。
特徴7. 上司の意見が全てで、発言しづらい雰囲気がある
日本の企業によっては、立場のある人の意見が全てだとという風土が根強く残っていることがあります。
部下が新たな提案をしても受け入れてもらえず、発言すること自体に嫌気がさすことが。
「発言をしても意味がない」「上司の意見が全て」だと繰り返し感じることで、どんどん消極的になっていきます。
事なかれ主義を改善するには、組織内で誰でも自由に発言できる雰囲気を作ることが大切でしょう。
【デメリット】事なかれ主義に潜む4つのリスク|続くとどうなるの?
事なかれ主義には、共通する特徴があることが把握できたところで、事なかれ主義を放置するとどのようなデメリットがあるのか気になりますよね。
ここでは、事なかれ主義に潜むリスクをまとめてご紹介します。事なかれ主義を改善しようと思えるデメリットばかりなので、ぜひチェックしてみてください。
デメリット1. 今は大丈夫でも、いずれ大きな問題になる
事なかれ主義は、波風を立てたくないので目の前に問題があっても見て見ぬふりをします。
つまり、向き合うべき問題をそのままにして何とかやり過ごそうとするのです。
小さな問題でも積み重なることで、後に取り返しのつかない問題に発展するでしょう。
問題を避けようとすればするほど、表面化した時には深刻な事態になってしまいます。
デメリット2. 自ら行動する人がいなくなり、成長が止まる
組織自体が事なかれ主義化すると、チャレンジ精神を持ち前向きに取り組む社員が減っていきます。
積極性を失い目の前にある仕事をただこなすだけの状態が続き、現状維持に徹することに。
新たなアイデアや発言が出にくくなり、組織自体が消極的になるでしょう。
その結果企業自体の成長が止まり、促進力のない組織となってしまいます。
デメリット3. やりがいを損失させて、離職率にも直結する
事なかれ主義が定着している企業では、やる気のある社員や出世したい社員が行き場を失います。
「どうせ意見を言っても通らない」「年功序列でしか年収がアップしない」と実感できたら、自分の積極性や能力を活かせる職場に転職を決めるでしょう。
社員のやりがいを奪うことは、離職率の向上にも直結してしまうのです。
デメリット4. チーム全体の士気が下がり、生産性が落ちる
「上司の意見しか聞き入れてもらえない」「ミスをすると凄く怒られる」という風土が定着している企業では、部下のやる気は格段に落ちます。自発的な行動をしても意味がないと感じてしまい、新たな挑戦を避けるように。
怒られないように目立たず、現状維持に徹します。その結果、組織の生産性やモチベーションが低下する悪循環に陥ってしまいます。
事なかれ主義が広まるのを防ぐ方法|会社や組織で改善する5つのコツとは?
「事なかれ主義を改善したい」
「事なかれ主義の雰囲気を脱却するにはどうしたらいいの?」
ここまで読んで、事なかれ主義を放置したくないと感じた人は多いはず。
組織での事なかれ主義を改善するには、ちょっとしたコツが必要です。
ここでは、会社や組織での事なかれ主義を改善する方法をご紹介します。事なかれ主義を脱却するためにも、参考にしてみてください。
改善方法1. 結果だけでなく、それまでに挑戦した過程も評価する
個人の業績を結果のみで判断してしまうと、できたかできなかったかの二択になります。常に結果を出し続けることはとても難しいことなので、結果のみで判断してしまうと努力の過程や姿勢を見逃すことに。
たまたまコンディションが悪く結果は出なくても、積極的に取り組み精一杯頑張った社員もいるでしょう。
結果のみに囚われず過程を評価し一人一人が主体的に頑張れる風土を作ることを心がけることで、前向きに取り組みやすい環境が作れます。
改善方法2. 誰もが話しやすい雰囲気を作る
事なかれ主義が蔓延している場合、自分の意見があっても発言しにくい雰囲気があります。
自由に意見が言えないと仕事に対して消極的となり、主体性を持ち取り組めません。そこで、上司と部下が意見を言い合える工夫が必要でしょう。
- メンター制:先輩社員が部下のサポートをする制度
- 1on1ミーティング:上司と部下が定期的に対話をする制度
などを取り入れて、普段からコミュニケーションが取れる状態を作りましょう。
改善方法3. ミスや失敗はチーム全体でフォローし合う
個人のミスを執拗に責めると「怒られたくない」「ミスをしたくない」という気持ちが強くなり、仕事に対して消極的になります。
もちろんミスや失敗がないに越したことはありませんが、ミスをしてもチーム全体でフォローできる仕組みを作りましょう。
- 段階的にチェックをしてミスにいち早く気付けるようにする
- ミスをした時にチームでのカバー方法を決めておく
などをすると、チーム全体のモチベーションがアップし積極的に仕事ができます。
改善方法4. チームの成果と個人の成果を評価する
自分の頑張りや努力が正当に評価されると、モチベーションアップに繋がります。
チーム全体の評価だけでなく個人の評価も取り入れて、様々な観点から平等な評価をすることが大切です。
例えば、360度評価なら上司の個人的な評価ではなく、同僚や部下など様々な立場の人が評価をします。複数の視点が入ることで、上司が気付かなかった頑張りや努力も評価対象となるのです。
このように評価方法を見直すことも、事なかれ主義の脱却には必要でしょう。
改善方法5. 自分の仕事が最終的にどんなことに繋がるのか知る
現状維持が当たり前になっている社員が多い場合は、仕事に対して当事者意識を持たせることが欠かせません。
何とかなく仕事をしているだけでは責任感や積極性が生まれないため、周囲に合わせて行動しやすくなります。
- 自分の仕事がどのような意味を持つのか
- 自分の仕事がどのような目的や目標達成になるのか
を再確認して、仕事をする意味づけをしていきましょう。
事なかれ主義を改善して、より生産性をアップしよう!
事なかれ主義は一見平和主義に見えますが、掘り下げていくと目の前の問題を避ける消極的な一面があります。
自分が悪くない場合でも争いを避けるために、意見を言わないこともあるので、企業全体がこの雰囲気では、モチベーションや主体性が下がってしまいます。
今回ご紹介した解消法を参考にして、社員が積極的に取り組める風土に見直していくことが事なかれ主義を改善する近道ですよ。
【参考記事】はこちら▽
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