“先見の明”の意味や使い方とは?具体的な例文と言い換えできる類語を解説
そもそも「先見の明」の意味とは?
先見の明とは、まだ現実で起こっていない物事を予測し、行動を起こす先読みの力のことを言います。
未来の見通しを外すことなく、あらゆる対策を重ね、予測していたことが起きた時には正しい対応力を発揮できている状態です。
先見の明は、漢字だけ見ると未来を見据える力だけだと思いがちですが、予見する知力や判断力、行動力、対応力、見識の深さなど様々な力を総合的に持ちあわせた言葉であり、仕事や人間関係、人生において、持ち合わせていると必ず役に立つ能力です。
先見の明の語源や由来とは?
先見の明は、中国の後漢書に収められた「楊彪伝」の楊彪(ようひょう)という登場人物が発した言葉で、悲しい歴史があります。
楊彪の仲間は、将来性のない素行の悪いわが子を自ら手をかけます。その後、楊彪の子どもが仕えていた主人の怒りを買い処刑されるのです。
「先読みの力がないばかりに迷惑をかけた」とわが子を殺めた主人へ伝えた言葉が由来となっています。そして、楊彪が仲間の先読みの力や判断力のことを「先見の明」と表しました。
ビジネスシーンにおける「先見の明」の正しい使い方
ビジネス上で誰よりも早く市場の流れを先読みし、独自の方法で先駆者となる人に対して用いられる「先見の明」。
例えば、今や有名になったセルカ棒など、毎年必ず1つは流行るヒット商品があると思いますが、そういった時代の流れを読んで商品を開発し、開発するだけでなくリスク対策を講じる人に対して、「あの人は先見の明がある」といった使い方がされます。
また、先見の明は書き言葉で使う場合が多く、話し言葉では同じ意味をもつ洞察力・予見力などが使われています。
ただし、話し言葉で使用しても全くおかしくはありません。下記に類語である「洞察力」と「予見力」との違いも紹介していますので、合わせて確認してみましょう。
ちなみに「先見の目」は誤用なため、使わないよう注意
先見の明とは、読み間違いが多いことわざです。特に「先見の目(め)」という言い方は誤った読み方ですので、知らずに使用して恥ずかしい思いをしないように注意しましょう。
将来を見通すという意味から、「よく見る目(め)を持っている」と解釈されることが多く、誤用されやすいです。また、明(めい)と目(め)で同じ発音ではじまるため、誤りやすいと言えます。
「先見の明」を使用した“よく使う例文”とは
先見の明の使い方は、シーンによっても変化します。どういった使い方があるのかを知れば、ビジネス・経営・歴史・結婚など、人生のあらゆるシーンで利用できるはず。
「先見の明」について、実際の使い方を見ていくと同時に、よく使う例文をマスターしていきましょう。
使い方1. 先見の明がある
先見の明があるという言葉は、基本的には予測した未来に向けて行動してきた結果が出ている相手に対して、褒め言葉として用いられるものです。
ただ、ビジネスでは、「先見の明がある」「先見の明がない」などと、成功や失敗の理由を述べる時に使う言葉としても使われています。
先見の明があるの例文
(誰も成し遂げたことがない仕事をやってのけた時に)あなたには先見の明がある
(第三者に対しての評価をする時に)先見の明があるから成功した
(自分の失敗を悔やむ時に)先見の明があるなら、失敗しなかっただろう
先見の明がある人とは?
将来を予測して行動する人は、結果的に大きな失敗をしない人が多いです。というのも、失敗をしたとしても巻き返す力を兼ね備えています。また、リスク回避能力が高いという特徴も。
そのため、先見の明がある人が何か行動する時は、事前調査を入念に行い、慎重にスタートします。そうした地盤固めが習慣化しているため、自然と人を見る目や将来性のあるものを見抜く力も備わっています。
つまり、先見の明がある人とは、結果を出すために必要な段取りを徹底的に行い、成功した人を指すのです。
使い方2. 先見の明に長ける
長けるとは、様々なスキルや能力を持ちあわせている人が、中でも飛びぬけて能力を発揮しているものに対して使う言葉です。
なので、自分が自分のことを紹介する時に「先見の明に長ける」とは使いません。他の対象と比較するような場面でも用いられることが多いでしょう。
能力を強調して使用する場合に用いられるため、誰かを応援したり、感心したりする場面で用いられることが多くなります。
先見の明に長けるの例文
彼の経営は、先見の明に長けるのでヘッドハンティングしたい(理由を述べる時に使う)
(好きな人のタイプを聞かれた時に)先見の明に長ける人と結婚したい
(現時点で偉大な功績を残している相手に)歴史に残るような先見の明に長ける人物だろう
使い方3. 先見の明を持つ
先見の明とは、基本的に過去を振り返って使用することわざです。
しかし、場合によっては願望実現のために、備えたい能力として語られることもあり、「~ために」「っていれば」といったような文章が続きます。
自分や相手が「“もしも”先読みの力を備えていたら…」という仮想状態で話す場合に使うことができ、憧れや目指す夢を語る時に使う人が多いでしょう。
先見の明を持つの例文
先見の明を持つために合理的な行動をしよう(願望)
先見の明を持つことができれば、将来性のあるビジネスができる(仮定)
計画性の有無は先見の明を持つ人の特徴でもある
使い方4. 先見の明を養う
経営やビジネス、結婚などにおいて先読みする力がある人は、生まれもった才能以外にも様々な努力を積み重ねています。
先読みの力を養う方法を知っていれば、人生の歴史に大きな転機を起こすことができるかもしれません。
そんな未来を求めて、将来を見極め行動する力を学びたいと思う人が使う言葉が「先見の明を養う」です。「養う」は「学ぶ」「育てる」という意味があります。
先見の明を養うの例文
先見の明を養うために信念をもつことが大切だ
先輩のもとで先見の明を養う
先見の明を養う行動には何があるだろうか?
「先見の明」と言い換えられる類語や同義語
日本語には、同じ意味や似たような意味合いをもつ言葉が数多く存在します。類語や同義語を知っていれば、さらに言葉に広がりが見えてくるはず。
ただ、使うシーンによって選択する言葉が変わってくるので、しっかりと細かい意味合いや使い方を知る必要があります。
「先見の明」と言い換えられる類語や同義語をご紹介しましょう。
類語1. 慧眼(けいがん)
慧眼(けいがん)は、見抜く力という意味があります。真偽・善悪を賢い知恵をもって判断し、将来を切り開くという点で「先見の明」と似ている部分があるでしょう。
読み方は「けいがん」だけでなく、「えげん」とも読みます。
先見の明と慧眼の違いは、使用するタイミング。先見の明は過去を振り返って用いる言葉ですが、慧眼は現在でも過去でも未来でも、タイミング問わず使用できます。
「慧眼」の使い方
(先読みの力がある人に対して)慧眼の持ち主なら、ビジネスの成功も夢ではないだろう
(相手の功績に対して)あのチームを集めた部長の慧眼には恐れ入る
彼の慧眼をもってすれば、隠しごとも意味をなさない
類語2. 先見性(せんけんせい)
先見性(せんけんせい)の意味は、何か事が起きる前にどんなことが起きるのかを予測する力です。先を見通す力という点でも「先見の明」と大変近い意味合いをもっています。
違いは、物事の結果が出ているかどうかにあります。先見の明はいい結果を残した人に使用されますが、先見性は将来を考えたり、いい方向に向かっている実感が得られたりする過程で使用されます。
「先見性」の使い方
先見性のある人は観察力があり視野も広い
経営者がもつべき先見性を兼ね備えている
先見性を身につけるにはどうすべきなのか
類語3. 深慮遠謀(しんりょえんぼう)
読み方が難しいことわざで深慮遠謀(しんりょえんぼう)という言葉があります。遠い先の未来のためにもつ、緻密な計画のことを指しています。また、計画を立てることも指します。
違いは明らかで、深慮遠謀はあくまで結果を出す過程であり、結果が出ていない状態であることが挙げられます。
先見の明は、既に結果を出している状態を表現する言葉なので、両者の似ている部分は失敗しないための道筋を立てるところと言えるでしょう。
「深慮遠謀」の使い方
今考えついたのではない。深慮遠謀があってのことだ(昔から考えていた計画のこと)
深慮遠謀なビジネスマンになろうと思う
彼は決して深慮遠謀だったわけではない。あくまでも直感で動いているはずだ
類語4. 予見力(よけんりょく)
予見力は、今現在をしっかり見据えることで、物事の行く末を予測する力を意味する言葉です。あくまでも視点は「今」にあり、未来を見通す力は現状判断の後に自然についてきます。
先見の明との違いは視点です。今現在から未来を見通す力を見るのか、事後に未来を見通す力があったかどうかを判断するのかという点で違いがみられます。
逆に似ているのは、予測する・予測したという事実です。
「予見力」の使い方
(失敗した後に)予見力があれば、事故の発生を防げたかもしれない
プロジェクトの成功には、彼の予見力を当てにしている
予見力を身につけて良い流れを作れるようになりたい
類語5. 洞察力(どうさつりょく)
洞察力は直感的な判断能力も交えた、物事を見通す力という意味があります。今目の前にいる人(物)の、目に見えない感情や思考などを読み取る力を指します。
見通すという点では先見の明と同じですが、今現在を見通すのか、これから先のことを見通すのかという点で違いがでてきます。
目に見えている物の本質を見抜くときには「洞察力」を使い、まだ見えていない将来の出来事に関しては「先見の明」を使うのが正解です。
「洞察力」の使い方
彼は常に冷静で洞察力がある
多くの経験から鍛えられた洞察力は、ビジネスにおいても武器になる
洞察力があれば、様々な角度から物を見ることができる
「先見の明」の対義語や反対語とは?
自分も含め、先読みの力がない人というのは多くいるものです。では、先見の明がない人たち、先見の明がない状態のことは何て表現するのが正解なのでしょうか。
先見の明がある人と比較で使われやすい、対義語と反対語について解説していきます。
対義語1. 見る目がない
先見の明の対義語と聞いて、最も多くの人が思い浮かぶのが「見る目がない」でしょう。
見る目がないとは、物事を判断する力や知識、経験や観察力が一般的に周りよりも劣っている状態を指しています。正しい判断ができないために、損をしてしまうことも多いです。
「先見の明」と使う時は既に成功していることからも、正しい物事の判断をしてきた結果が出ています。このことからも反対の意味を成すものとして、使われる言葉といえるでしょう。
対義語2. 浅慮(せんりょ)
浅慮(せんりょ)とは、考えがあさはかなことを意味します。深く考察する力に欠けている状態で、相手の行動や経験から学ぶことができず、多くの失敗を経験をした人に用いられる言葉です。
先見の明は、成功のための緻密な計画、素早く行動に移す過程があるでしょう。浅慮はそうした努力などが欠けている状態で、反対の意味として使える言葉です。
対義語3. 察しが悪い
察しが悪いとは、あらゆる面で鈍感でその場の空気を読めない、理解力に欠けるなど状況判断が下手という意味合いがあります。
先見の明は、現在の仕事をこなしながら目的に向かって器用に物事を進めていくため、あらゆる面で頭の回転が速い人が多いです。
未来を読んで行動するためには、察しが良いことが必要不可欠ですが、そういった判断ができない人のため、先見の明と反対語になります。
「先見の明」を用いた英語表現
先見の明とは、英語の表現ではforesightという単語を使用して文が構成されます。
例えば、「彼には先見の明があった」なら「He had the foresight to start it.」となります。
また、「先を見通す」「憶測する」「推測する」といった同じ意味合いをもつ単語には、「conjecture(推測/憶測する)」「surmise(推察する)」「guess(推測する)」といった英語表現が使われるでしょう。
先見の明がある人に対して、正しく評価をしてみよう。
ビジネスシーンや私生活でも、物事が起きる前に先読みができて行動に移せる人は、物事がスムーズに進み失敗も最小限で済みます。
正しい意味を把握して会話の中に盛り込んでみると、それだけで知識の深い人という印象が強くなるでしょう。
また、意味を問われても答えられる知識人としても評価されるかもしれません。しっかり覚えて、ビジネスシーンに取り入れてみてくださいね。
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