「思いもよらぬ父親の反応」僕は彼女に妊娠を告げられた|第10話

小嶋 2017.08.22
もしも彼女が妊娠したら、男にはこんな現実が待っている。父親になる男のリアルに描く体験記「僕は彼女に妊娠を告げられた」第10話。
父親の反応

緊張した面持ちで実家へ到着すると、母が優しく出迎えてくれました。


「いらっしゃい、暑かったでしょう。すぐにお茶いれるわね。」


リビングへ通されると、そこにはソファでくつろぐ父の姿がありました。


「ただいま」


「お久しぶりです。お邪魔します!」


軽い挨拶を交わしながら、彼女が、持参した手土産を渡しました。


「わざわざ土産なんて珍しいな!何か頼み事でもあってきたのか?(笑)」


父は軽い冗談のつもりで言ったのでしょう。


いつもなら


「違いますよ!礼儀として!(笑)」


と彼女も冗談交じりに明るく返すのですが、この日ばかりは、さすがの彼女も黙り込んでしまいました。


そんな彼女の姿を見て、心配に思ったのか


「おいおい、本当に黙り込むことないだろ。それとも、本当に何かあったのか?」


と父の表情も曇ります。



僕が彼女にアイコンタクトを送ると、彼女も大きく頷いたので、


「実はさ、彼女が妊娠したんだよね。」


ここはストレートに妊娠を報告しました。


「はっ!? 妊娠っ!? それは本当かい!?」


状況が飲み込めず、思わず彼女へ寄り添う父。


「本当です、一昨日で妊娠9週目になりました。」


妊娠を認め、母子手帳とエコー写真をテーブルに差し出す彼女。


「おいおい本気かよ・・・、一回母さんを呼ぼう」


父は慌てて、母をリビングへ呼び戻します。


「彼女が妊娠したんだってさ。どうするよ?」


「どうするも何も。もう子供じゃないんだし、自分たちでやりくりさせましょうよ」


動揺する父とは対象的に、冷静な口調で話を進める母。


「そうは言ってもさ・・・、あなたのお母さんは何とおっしゃってるの?」


父がたまらず彼女に話を振ると、


「私の母は、孫ができたことを喜んでいます。」


彼女は落ち着いた口調で答えました。


「そうか。彼女の親御さんが前向きに受け入れてくれるなら、もう責任をとるしかないよな」


「えっ!? それだけっ!?」


状況を素直に受け入れてくれる父に、逆に僕が拍子抜けすると、


「そりゃあ、そうだろ。彼女のお母さんが喜んでくれてるのに、俺たちが嫌ですとはさすがに言えないだろうよ。」


彼女の親族が出産に前向きだったこともあり、父は怒ることなく妊娠を受け入れてくれました。



「赤ん坊だったお前が年内で父親になるのか。にわかに信じ難いな。」


ボソっとつぶやく父に、


「彼女と一緒に頑張るよ」


と伝えると、


「デキ婚なんて、ただですら印象よくないんだから、頑張るのは当たり前。落ち着いたら籍を入れて、きちんと彼女と子供を幸せにすること。いいな?」


そう、真摯に向き合ってくれました。


つい数日前まで、父親に報告しない方法はないかと模索していた僕は、途端に恥ずかしくなると同時に、この歳になってやっと、なんだかんだ気にかけてくれてる父の偉大さに気が付きました。


そして、しっかりと報告して良かったなと安堵し、父親になる責任を自分の父親を見て改めて感じるのでした。



<続く>


僕は彼女に妊娠を告げられた

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