スティーブ・ジョブズのファッション哲学。Appleの原点は日本にあった
天才が愛したファッション哲学とは
今記事では、Appleの創設者「スティーブ・ジョブズ」のルックスについて着目します。“ノームコア”や“シンプル”な着こなしに隠されたジョブズのファッション哲学とは?ジョブズの原点に隠された秘密を紐解いていきます。
ジョブズの一般的なルックスイメージ
スティーブ・ジョブズのルックスを思い浮かべる時、どのようなルックスをイメージされますか?多くの方が、スニーカーにデニム、黒のタートルネックを着ている姿をイメージされることでしょう。iPhone発表のプレゼンでも披露したスタイルです。
Apple新商品発表時の印象から目に焼き付いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- NewBalance991のスニーカー
- リーバイス501のデニム
- イッセイミヤケの濃紺のタートルネック
彼はiPhoneなどの新商品発表の時だけでなく、ほとんど同じルックスで過ごしていたと言われています。亡くなるまで約10年続けていたそう。その理由はどこにあったのでしょうか?
ジョブズスタイルの原点
いかにジョブズスタイルが確立されたのか?驚くべきことに原点は日本にありました。
1980年代、ジョブズ氏はソニーの厚木工場に見学に行く機会がありました。彼は、工場で働く従業員が同じ作業着を着て仕事をしていることに興味を持ち、案内していたソニー創業者の盛田昭夫氏に「なぜ同じ服装なのか?」と質問したそうです。その問いに盛田昭夫氏は
「第二次大戦後、日本人は着る服もなかった。だから会社が従業員に作業着を制服として配らなければならなかったのです。でも今では、この制服が従業員と会社をつなぐ存在になっている。制服を着ることで、ソニーの一員ということを実感することができるんですよ。」出典:http://www.amazon.co.jp/ と回答しました。盛田氏の言葉に感銘を受けたジョブズは、Appleでも制服を取り入れようと画策したと言います。しかし社内で猛反対を受け、断念せざるを得ませんでした。するとジョブズは驚くべき行動に出ます。
自分だけでも制服を。イッセイミヤケとの関係
Apple内で制服を取り入れることに反対を受けたジョブズ。しかし諦めません。自分だけでも制服を作ろうと考え、制服の特注を依頼しました。相談・依頼相手は、ソニーの制服も作成していたファッションデザイナーの三宅一生氏でした。ジョブズがイッセイミヤケのタートルネックを愛用しているのは、三宅一生氏が作成した制服だからだったんですね。ソニーの盛田昭夫氏のルックス哲学と、三宅一生氏のデザインがジョブズのスタイルの原点だったんです。日本人として誇らしく思えますね。
ジョブズに影響を及ぼした「禅の精神」との出会い
1973年、ジョブズが友人とインドを旅した際に、聖者と呼ばれたニーム・カロリ・ババに出会ったことで、人生観が一変します。
カリフォルニアに戻ったジョブズは、頭を丸め、インドの伝統装束に身を包み、「仏教徒」に変装していました。この頃、ジョブズ氏が曹洞宗の僧侶であり、禅の師匠となる知野老師(乙川弘文)と出会いました。仏教心に目覚めたジョブズ氏は、カルフォルニア州のロスアルトスにある禅センターにいた知野老師の下に足しげく通うようになります。
禅は“シンプル”の原点にも
『Stay hungry, Stay foolish』は、『愚の如く、魯ろの如く、よく相続するを主中の主と名づく』(曹洞宗の祖、洞山良价(とうざんりょうかい)禅師が説いたもの)を訳したものと推測されます。『よく相続するを主中の主と名づく』は、“コツコツと1つのことを続ける人が最も強い”という意味です。形あるものは必ず滅びます。だからこそ「命ある間にたゆまず精進し、一瞬一瞬の生を最大限に発揮せよ」という教えなんですね。噛み砕くと"シンプルに生きる"ということです。ジョブズ氏はこの教えに影響を受け、基本理念を"シンプルとフォーカス"と掲げ生涯を全うしました。Appleの新商品創造に全力で取り組む姿勢やシンプルを追求する流儀は、禅の精神が影響を及ぼしていたということです。
服装にも禅の精神を。ノームコアスタイルの確率
ジョブズは禅の精神を毎日身に付けるもの、“服装”にも転化。“シンプルとフォーカス”の思想と哲学がジョブズスタイルを生み出しました。近年では「ノームコアスタイル」として流行しています。ジョブズはノームコアのファッションアイコンとしてもよく取り上げられ、話題となっています。
ノームコアとは?
ノームコアとは、ノーマルとハードコアを掛け合わせた造語であり、直訳すると「究極の普通」という意味です。ノームコアスタイルとは、デニムにTシャツ、スニーカーなど、個性を主張しないシンプルなスタイルのことを指しています。そして、ここでポイントとなるのが、シンプルな中にもさりげない「こだわり」を持つことです。
【参考記事】シンプルを極めたノームコアとは一体?
スティーブ・ジョブズはスーツも着る!?
今までジョブズスタイルについてお話してきましたが、彼はスーツもしっかりと着こなします。銀行に行く際には、世界最高峰の男の服と言われる"ブリオーニ"のスーツを着ていました。ジョブズの一般的なラフなイメージとは異なり、とても洗練されたスーツスタイルです。銀行では融資交渉などを行います。そういった交渉の場においてはスーツスタイルでいることが重要であるということをジョブズは理解していたと言えます。
場面によってルックスに気を遣うことで業績は向上する
場面によってルックスを使い分ける、さすがスティーブ・ジョブズ、抜け目ありません。筆者の過去記事「ルックス経営学 −会社の業績は、経営者の“外見”で決まる−」でもご紹介させていただきましたが、“容姿レベル84%以上の外見の持ち主は、容姿レベル16%以上の普通のルックスの人たちよりも売上高の平均が7%も上である”という調査結果もあります。Appleの業績向上には、スティーブ・ジョブズのルックス哲学が少なからず関係していたと言えるでしょう。
まとめ
スティーブ・ジョブズがファッションアイコンとして取り上げられるノームコアスタイルは、動きやすさや着心地を重視して紹介されるケースが多いです。そのため、ジョブズがルックスを重視しなかったと言われることもあります。しかし、彼のスタイルには明確な原点があり、強いメッセージがありました。
また、ルックスの重要性を理解し、TPOに合わせてルックスを効果的に活用していました。少なからずAppleの業績向上に繋がった要因の一つであると言えるでしょう。ジョブズのように個人個人が持つ哲学をルックスに反映することが、多くの人を魅了する秘訣なのかもしれませんね。
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